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ラブストーリー

Home made 恋レシピ 9

   

情事が終わった後も、抱き合っていた二人。
杏樹の頭を撫でている手に、何かを感じた杏樹は、光輝を胸に抱き、彼の祖母の気持ちを考えてみた。
それを伝えた時、光輝からの優しい言葉に安心したのもつかの間、夕食の時間が迫っていることに気付いた二人は、大慌てで用意を始めたのだが…。

 

 情事が終わっても、互いの肌に触れあいながら寄り添っていた。
 光輝が何度も深呼吸を繰り返しながら、杏樹の頭を撫で続けている。まるで、自分の頭を撫で続けているように。
(本当は……、おばあちゃんにご飯を作り続けた自分を……)
 杏樹は、腕を伸ばして光輝の頭をそっと撫でた。そして、自分の体をずらして胸に光輝の頭を抱きこむと、優しく何度も撫で続けた。
「杏樹……」
 呟かれた名前に薄く口角上げた杏樹は、光輝に囁くように話し出した。
「本当は……、お父さんやお母さんに気付いて欲しかったんですか……? 自分も料理できるよって……。違ったら、ごめんなさい……」
 撫でていた手を止めて胸に抱き締めると、その胸に吸い付きながら、光輝がフッと顔を緩めた。
「小さい頃は……そう思った。だけど今は、ただ……、どうして本当の気持ちを言わなかったんだって……、ばあちゃんに問いたい気持ちなんだ……」
「気遣い……、でしかないと思う。病気になると、気弱になるよ……。だけど、どんな形でも自分に何かしてくれる人を邪険には絶対できない……。おばあちゃんもきっと……、そうしてくれるお父さんやお母さんに気を遣いすぎただけだと思う……」
 杏樹は、内心怯えていた。こう話す事が、違うと否定されるのが怖かった。
 人の心など、本当は分かるはずは無いのだ。知ったふりで話すことが、どれだけ怖いことか、杏樹は知っている。その所為で、前の会社では散々なことを裏では言われていた。
 ただ、杏樹にしてみれば知ったふりで話したつもりは毛頭なかったわけだ。心底心配してのことだったのだが、結局結果は、自分を傷つけられただけ。
「そうかもしれないな……。さんきゅな、杏樹」
「しーちゃん……」
 ギュッと抱き締められて、杏樹は光輝の髪に顔を埋めた。
 どうしたのかと窺おうとした光輝は、微かに体が震えていることに気付いて、抱き締めなおした。
「ばあちゃんのこと、そんな風に考えてくれる杏樹は、優しいな。やっぱりフミちゃんの血が流れてんだなぁ」
 冗談交じりに言って、杏樹の胸から顔を上げた光輝は、体をずらして今度は自分の胸に抱いた。
「ずっと、フミちゃんと暮らせよ? いなくなったら、血眼になって探して連れ戻してやるからな」
 笑いながらそう言うと、再び杏樹の体を優しく撫で回し、もう一度二人は繋がった。

 

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