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ラブストーリー

Home made 恋レシピ 10

   

光秀の姿も消えて、一人になった光輝は、杏樹がいる前で何故あんな事を言ってくれたかと光秀を恨んだ。
だが、改めて自身の歩んできた現実を教えられ、自業自得だと自嘲した。
ふと時計を見上げれば、もう配達の時間になっていた。
突然キャンセルするわけにもいかず、やる気を無くしながらも作り終えると、突然家に入ってきた杏樹に目を見開いた…。

 

 光秀がいなくなると、光輝はテーブルに拳を叩き付けた。
 どうして杏樹がいる時にそんな話を持ち出したのかと、怒りが治まらず、何かに当たりたくて仕方が無い。だが、髪を毟るように掴んでから、自嘲気味に口角を上げると、自業自得だと項垂れた。
 親に対する反抗というわけではなかったが、今の今まで女遊びは激しかった。生まれ持った容貌に群がる女達を嘲笑いながら、好き勝手やってきたのだ。その事は、勿論親の耳に入っていた。
 その罰がコレかと、吐き捨てるように笑った光輝は、テーブルに寄りかかり目を伏せ遠くを見詰めた。

 シンと静まり返っていた部屋は、夕暮れの茜色に染まっていた。ふと視線を戻した光輝は、ゆっくりと時計を見上げて嫌気がさした。
 もう配達を始めている時間だ。なのに、まだ出来上がっていない。
 本当なら、杏樹の姿もここにあって、二人で笑いながら配達を始めていたはず。それが、今はシンと静まり返った部屋に一人、やる気さえ奪われた状態でいる。
 杏樹がいない。
 その事が、初めて光輝の胸を痛ませる。
 こんな気持ちなど持った事がない。苦しくて、今すぐ側に行きたいのに、それを許されていないこの状態に暴れだしたくなる。
「どうすりゃ……、何言えばいいんだよ……」
 何を言ったところで、杏樹の傷を知っている以上、どうにもならないと思わざるを得ない。
 光輝は、もう一度時計を見上げた。
 待っている人がいる以上、届けないわけにはいかない。
 キッチンにふらりと戻ると、杏樹が途中にしていた長芋の千切りの色が少し変わっていた。参ったなと思いながら、それをボウルに入れて冷蔵庫に仕舞った。そして、代わりに何か…そう思いながら、キャベツとちくわ、そしてしらす干しを出して炒めた。
 二人で作ったサンマも揚げ終わると、それらを皿に盛り付けていく。
 全部を盛り付け終わると、いつもより三十分も遅れていた。早く届けてやらないと…、そう思った時、カチャッとドアが開く音がした。
 何だと、ゆっくり振り向いた光輝は、そこにある姿を見て、目を見開いた。
 静かに体を中に入れてドアを閉じたのは杏樹だ。だが、その表情は覇気がない。
「もう、時間過ぎてるでしょ……。早く届けてあげないと、皆待ってる」
 そう呟いて、杏樹は中に入って来て皿を持つ。そして、そのまま出て行った。
 声を掛けるタイミングを逃した光輝は、既に姿のない杏樹に項垂れた。だが、今すべきことを教えられた気がして、直ぐにケースを取り出して皿を確認すると、車のキーを持って配達に出た。

 

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