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SF・ファンタジー・ホラー

だぶ・あっぷる【前編】

   

 紡ぐ物語の前語り。
 互いに吐かれる言葉に意味などは求めずに、ただその中に織り交ぜられた、心のやり取りが垣間見えればご愛嬌。

 だぶ・あっぷる、前編。

 どうぞご堪能下さいませ。

 

○プロローグ的な○

 それは海のよう、と言えば聞こえはいいかしら。

 クラス全員の心の上っ面を覗いてみたら、どれもこれも代り映えのない、少しばかりの不幸と幸せを携えた形ばかりだった。
 
 それでも同年代の形や色は様々で面白くて、けれど十数年生きて来たそれらは、やっぱり代わり映えのないものばかりだった。
 今年も退屈な一年になるのかしらね。

 そんな事を思いながら転寝をしたのは、その前の晩に少しハードな夜を過ごしたからで、たまたま心が擦れていたのもあったのかもしれず、ただ静かに、呼吸をするように覗き見たのは、本当に偶然だった。
 
 その第一印象は広かった。
 
 そこは静かで、けれど音が掻き消えるような冷たさがあるわけでもなくて、夏の広い海に浮き輪をみっつくらい持って、ぷかぷか浮かんでいるような感覚だった。すぐそこに岸があって、波も穏やかで。いつまでも居たい、そんな場所だった。
 ああ、素敵だなあって思ったわけ。そして目を開くと彼は居て、「先生に当てられるから起きた方がいいよ」なんて言われてしまって、「授業中だったのね」なんて零した私は、そこで初めて、彼を特別な他人として感じるようになった。

 それが最初の触れ合いの話。
 本当の最初。本当の交わり。

 彼の奥底にある、私だけが知っている心地よい場所に、私はそれから何度も、何度も何度も通い続けた。

○○○

 

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