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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

愛の聖域 前編

   

都会の暮らしに憧れるひとりの女性
冴えない田舎出の女 絹代は、あるひとりの男性と出会い、恋に落ちる、愛のミステリー

この作品は犯人探しのミステリーではなく、冒頭から既に犯人がわかっており、どうやってその犯人が犯罪を犯すに至ったか…という展開になっています

 

【序章】

 暦の上では春を示しているというのに、まだうっすらと肌寒さを感じる外の空気。室内であっても太陽の光りが差し込まないと、足下から冷え込みが伝わってくる。
 四角い閉ざされた1室に大人が4人。
 3人の刑事1人の女――
 強面でただ真っ直ぐ前の女を見据える男と、ただ黙って時の経過を待つ女。
 ふたりの間の均等を保とうと、あくまでも中立を保つ男、そして全てを漏らさず見記す男。
 ここはとある警察署内の取調室である。

 拘留期限は今日いっぱいで切れる。
 長年つちかってきた刑事の『勘』がホシは目の前の女だと訴えているが、これといっていまひとつ物的な証拠に欠けていた。
 50前半位だろうが、不規則な仕事柄のせいか、それよりも老けて見える。
 しかしそれでも、突き刺す瞳の奥の輝きは、斜め横に立つ若い刑事よりもハッキリと感じられる。
 この仕事が天職なのだろう――きっと。

 限られた時間内での駆け引き、はじめは一方的に刑事側が問い詰め続けていたが、黙秘を貫く相手に対し、それは無駄な浪費でしかなかった。
 次第に正面の男の口数が減り、周りも合わせるように言葉数が減っていった。
 互いの根競べが始まったのは、拘留開始から3日目のことだった。
 しかし、どちらもその意思を折ることなく、時間だけが過ぎていく。残すところあと数時間を切った頃、先に根負けしたのは、20代半から後半、刑事というにはまだ新人の域を出ていない、『成田』と呼ばれていた男だった。

「どうして……?」

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

愛の聖域<全2話> 第1話第2話

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