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前夜祭の後始末 【後編】

   

話の時間軸はハロウィンの翌日に戻る

阿倍野先輩に迫られるオレ
追いつめられるオレ

身の危険を感じつつも、オレには先輩から責められても仕方のないことを昨日のパーティーでしてしまっている

だから仕方ない、そう諦めかけた時、オレの窮地を救ってくれたのは意外な人だった

 

◆◇◆◇◆

「やあ、田所洋二くん。はじめまして、というべきかな。それとも昨日はどうも、というべきかな?」

 どこで知ったんだよ、オレのフルネーム。

 あの場所でオレのフルネーム知っているのは萌絵だけだけど、萌絵自身がばらすとは思えない。

 いやそれ以前に、いつオレだってバレた?

 オレというより、萌絵の替え玉ってことにいつバレた?

 オレの脳内はもうどうして? という言葉が何回もリピートしていた。

「そう、不思議がることでもないと思うが? 楠木さんが僕と手を繋ぐという行為に出た時点で、嬉しいというより、違和感の方が先に出ただけのこと。キミ、彼女の元カレで、彼女のそういうところ知らなかったの?」

「萌絵の元カレってとこまで知っているのかよ……」

「ふっ……好きな人の事は何でも知っていたいと思うことは、当然の欲求じゃないか。だからキミの事も知っていたよ。高校の時の卒業アルバムで見知っていた」

「じゃあ、萌絵のその……」

「もちろん、彼女が男性を苦手としている事も知っていたよ。それでも、僕ならそんな彼女の事も全て受け入れ、彼女が受け入れてくれるまで待ち続けられる自信がある。だってそうだろう? キミという前例があるんだ」

 萌絵を諦めない理由のひとつが、オレという存在だということを知ると、萌絵に対して更に申し訳なさが募るが、それはそれ。

 今はオレ自身の危機をなんとかしなきゃならいない。

「萌絵じゃないと気付いたのに、なんでずっと騙されていたんですか?」

「そりゃあ、昨日はハロウィンだったし。男性が女性の仮装なんて、滅多にない催しじゃないか。それはそれで楽しめそうだと思ってね」

 声でバレるとか、筆跡でバレるとか、そんな事以前の問題だったわけか。

 萌絵なら多分あの時、先輩に手を握られようとしたら逃げるという行動を取ったかもしれない。

 そうだよな、男性恐怖症なのに手を握るはずないよな。

 例え仮装して自分ではない者になっていたとしても、彼女は役者じゃない、本性隠して演じれるはずがない。

 ただ黙って先輩の言葉を聞くことしかできないオレに、先輩は容赦なく迫ってくる。

 階段の踊り場という狭い空間で、オレは壁へと追い込まれていく。

 背中がぴったりと壁に付くともう覚悟を決めるしかないと腹を括り、諦めの吐息をこぼした。

 

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