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LOTUS extra 〜Godfather Death〜 <2>

   

「大きな怪我も病気もなく、無事に今日の日を迎えられて、本当に良かったわ。アルちゃん、16歳のお誕生日おめでとう」
「ん」

LOTUS』 ―桜井×野々宮姉弟―
≪「LOTUS」 番外編≫

Illustration:Dite

 

 その通り、俺は平等主義なんだ。
 この世の誰よりもね。

 愛する弟に素敵な名前をつけてくれる、良い名付け親を探そう。
 そんな自分の考えを見透かされて、フィオーレは赤ちゃんを抱いたまま、何歩か後じさりました。
「俺じゃダメかな? 俺なら、その赤ん坊に結構イイ名前をつけてやれると思うんだけど」
「あの、あなたも天使さまなのですか? それとも悪魔さん?」
「天使だの悪魔だのって、いまどき珍しいな。お嬢さん、君はそういうのを信じているんだ?」
「だって、さっき、向こうの小道で会ったんですもの」
 そう言うと、フィオーレは、ここまでの経緯を話しました。
 細縁の眼鏡をかけた若い紳士は、フィオーレの話を聞いておかしそうに笑うと、天使と悪魔から上手く逃げ出してきたフィオーレの手腕を褒めました。
「なるほどね。まったく、相変わらずの暇人たちだな。あんなのと関わり合いにならなくて正解だったよ、お嬢さん」
「あんなのって……お兄さんも、天使さまや悪魔さんに、会ったことがあるのですか?」
「まあ、商圏が重なるからね」
「しょうけん?」
 フィオーレには難しい言葉だったのでしょう、小首を傾げて聞き返します。若い紳士はクスリと笑うと、フィオーレの頭を優しくなでました。
「早い話が、俺も人間じゃないんだよ。何だと思う?」
「何って言われても……もしかして、神さま、ですか?」
 先ほどの天使が「ウチの神サマは忙しい」と言っていたのを思い出しながら、フィオーレはどこか楽しそうな顔をしている若い紳士を見上げました。黒に近い、濃い灰色のフロックコートをまとった姿は、天国を治める神さまのようには見えません。けれど、天使や悪魔と会ったことがあるのなら、やはり神さまではないかと思ったのです。
 それに、向こうの小路で出会った奇妙な天使は、神さまは「急な予定が入って来られなくなった」と言ったのです。もしかしたら、その急な予定に都合がついて、赤ちゃんに良い名前を授けるために来てくれたのかもしれません。フィオーレは、この若い紳士が――この不思議な青年が「神さま」だったらどんなに素敵だろうと思いながら、回答を待ちました。
「当たりだよ、お嬢さん」
「わあ、本当に?」
「本当さ。でも、君の言う神さまって、上のほうに住んでいる彼のことだよね。俺も神だけど、住まいは下のほうにあるんだよ」
 若い紳士の言っていることがわからず、フィオーレがまたまた小首を傾げます。すると若い紳士は石畳にひざまずき、フィオーレの肩に手を置きました。
「お嬢さん、俺はね、死神なんだ」
「しに、がみ…………!」
 ひゅっと息を飲んで、フィオーレが若い紳士を見つめます。
 その瞬間、若い紳士の瞳が金色に光りました。怖いはずなのに、なぜか見とれてしまい、フィオーレの頬はいつしか薄紅色に染まっていました。

 

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