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SF・ファンタジー・ホラー

LOTUS extra 〜Godfather Death〜 <3>

   

「ただし。俺が患者の足のほうに立ったら、その患者は3日ともたない。一両日中に必ず死ぬ」
「なんでだよ。なんで全員、助けてやらねーんだよ!」

LOTUS』 ―桜井×野々宮姉弟―
≪「LOTUS」 番外編≫

Illustration:Dite

 

 そうだよ。
 誰もが最後には、俺の手に落ちるんだ。

 建物の外に出ると、ヴィスキオはいきなりアルベロの手を掴み、驚くような早さで歩きはじめました。まるで、衛兵がようやく捕まえた罪人を引き立てて行くようです。アルベロはヴィスキオの手の冷たさに驚きながら、手を離し、歩く速度を落としてくれるようにと訴えました。
「センセ、手、離せって」
 痛いほどに強く掴まれ、こらえかねたアルベロが、ヴィスキオの手を振りほどこうとします。けれど、ヴィスキオは聞く耳を持たず、手も離そうとしません。アルベロは、小走りになってついて行くしかありませんでした。
「さあ、着いたよ。アルくん、ここまでの道は覚えたね?」
「ったく、無茶苦茶だっての」
 ようやく手の自由を取り戻したアルベロが、息を整えながらヴィスキオを見上げます。けれど、ヴィスキオは澄ました顔をしているだけでした。
「覚えるも何も、廃堂の裏手だろ。あっちにデカい教会が建つまで、ここに修道院があったって聞いたぜ」
「さすがアルくん、物知りだね。ここが君の仕事場だよ」
 そう言ってヴィスキオが指さしたのは、修道院の跡地に残る、今にも崩れそうな建物でした。それでも、入口だけは堅牢な扉に閉ざされています。ヴィスキオは扉の前に立つと、呪文のような短い言葉を唱えて、パチリと指を鳴らしました。
「これがこの扉を開ける合図だ。簡単だろう? さあ、入って」
 促されるまま扉のなかに入ると、そこには色とりどりの見知らぬ花々が咲いていました。窓の少ない煉瓦造りの建物ですが、まるで温室のようです。窓辺には大きな作業台が置かれ、そこには昔の錬金術師が使っていたような、蒸留器に似た不思議な道具が並んでいました。
「ここはね、俺が手塩にかけて育ててきた薬草園なんだ」
「薬草園?」
 うなずいて、ヴィスキオはアルベロの耳にふっと息を吹きかけました。アルベロは驚きの声と共に飛び上がり、息を吹きかけられた左耳を押さえました。ヴィスキオの息はその手よりも冷たく、気づけばアルベロは、ガタガタと身震いをしていました。
「なっ、何すんだよ!」
「アルくん、そのあたりに生えている花を、適当に摘んでごらん。いいから、文句を言う前に早く」
 文句を言おうとした出鼻をくじかれては、アルベロも何も言えません。アルベロはヴィスキオに言われた通りに、手近に生えていた薄紫の花を、一本摘んでみました。
 すると、どうでしょう。
 摘んだ花が、鈴を鳴らすような声で喋りはじめたのです。
「わたしは熱を冷まします」
「うっわ、なんだコレ!!」
「初心者のアルくんにもどれがどんな薬草だか良くわかるように、それぞれの効能を自己申告するように躾けておいたんだ」
 驚きのあまりに摘んだ花を床に投げ捨てたアルベロの横で、ヴィスキオが手近の薬草を次々に手折っていきます。そのたびに薬草がかすかに揺れながらそれぞれの効能を述べ、その信じがたい光景に、アルベロは目を丸くするばかりでした。

 

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