幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

SF・ファンタジー・ホラー

LOTUS extra 〜Godfather Death〜 <4>

   

「これは人間の生命の灯だ。この蝋燭が燃え尽きるとき、君たち人間は息を引き取る。そうしてこれが、君の蝋燭だよ」
「オレ……死ぬのかよ……………………」

LOTUS』 ―桜井×野々宮姉弟―
≪「LOTUS」 番外編≫

Illustration:Dite

 

 なんだよ…………。
 死神は結局、死神ってことかよ……………………。

 アルベロは幼い頃から、なかなか利発な少年として知られていました。姉のフィオーレが苦労して弟を学校へやっていること、この姉弟には兄のような優しい後見人がいて、折々に訪れては勉強まで見てやっていることなども、近所に住む人々は良く知っていました。
 それでも、アルベロが上の学校にも行かずに医者になったときには、誰もが驚きを隠せませんでした。口の悪い人々は「病気を治すどころか、逆に命を取られそうだ」と笑い合うほどだったのです。けれども、ひと月が経ち、ふた月が経つ頃には、アルベロは「九番街に住む少年医」として、大きな評判を集めるようになっていました。
「アルベロくんは、まったく大したお医者さまだ」
「助かることも死ぬことも、最初からわかっているんだからな」
 アルベロを褒めたたえる声は日増しに大きくなり、誰もが国一番の名医だと噂するようになりました。西へ東へと精力的に往診するアルベロのもとには金貨銀貨が山のように集まり、暮らし向きは、瞬く間に豊かになりました。ついには売りに出されたばかりの高台の屋敷を買い取り、使用人と馬車を揃え、手まわりの品だけ携えて新しい生活を始める――というところまで話がまとまりました。
 そんなふうにして、ヴィスキオと約束した「3ヶ月」まで、あとひと息となった日のことです。ヴィスキオのもとに、城からの使者がやってきました。
「流行り病? って、例の悪い風邪か」
「はい。王女さまと第二王子さまが次々に倒れられ、火のような高熱でお苦しみです。国王陛下、王太子殿下からの、往診の御要請でございます」
 壊れかけの古い建物が立ち並ぶ九番街の狭い路地に、王家の紋章が輝く四頭立ての馬車がとまっています。やがてその路地に、雪のように美しい白馬を駈る少年がやってきました。
「おお、これは王太子殿下!」
 城からの使者が、息せき切って飛び込んで来た少年の前にひざまずきます。その顔を見て、アルベロは驚きの声を上げました。
「王太子って……おまえ、王子サマだったのかよ!」
「アルベロ! やっぱりおまえだったか、良かった」
 王子は羽根つきの大きな帽子を取ると、みごとな出世を遂げた、かつての学友の手を強く握り締めました。
「隠していて済まない。我が王家の男子は、15になるまで、身分を隠して庶民の学校へ通うことになっている」
「道理で、アタマいいのに急に辞めたと思ったぜ。ってことは……おまえんトコの王子サマみてーな弟、正真正銘の、本物の王子サマだったってワケか」
「ああ。王都に戻ってからも、おまえのことは常に気に掛けていた。出来の良いおまえのことだ、必ずや、世に出て名を成すと思っていた。それが、まさかこんなに若くして、国一番の名医になっていようとは」
 王太子は十字を切って神に感謝を捧げると、どうか姉と弟を救って欲しいと懇願しました。
「頼む。王都に住まうすべての医師に見せたが、病状は一向に良くならない。姉上など、もう、明日をも知れぬという。次期国王の命ではなく、旧友の頼みとして、どうか診てやってほしい。報酬は望みのままだ。姉上たちが助かるのなら、一千袋の金貨も、いいや、王位でさえも惜しくはない」
 切々と訴える旧友の姿を見て、何も思わないようなアルベロではありません。フィオーレも心配そうに見守るなか、アルベロは姿を消したままのヴィスキオに目を向けました。するとヴィスキオが、ニッコリ笑ってうなずきました。

 

-SF・ファンタジー・ホラー

LOTUS extra 〜Godfather Death〜<全4話> 第1話第2話第3話第4話