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星物語<3> 琴座の話

   

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 銀河連邦評議委員長のナリシスは、冷静沈着の評判が高かった。
 どんな時にも決して慌てない。
 あの宇宙大会戦のときにも、ほとんど全滅に近い絶望の状態の中で、声色ひとつ変えずに適切に指揮をして、ついには勝利を収めたのである。
「た、大変です」
 副官の一人が、血相を変えて飛び込んできたとき、ナリシスはチラリと目を上げただけであった。
「琴座に超新星爆発がありました」
「それで……」
「SNのⅢ型です」
「なに!」
 ナリシスは、椅子から飛び上がった。
 彼がこれほど興奮したことは、これまでにないことである。
 だがすぐに冷静さを取り戻すと、的確に命令を下していった。
 報告を聞いてから一秒後、戦略は頭の中で組み立て終わっていた。
「使える巡洋艦は二万隻ある。すぐに準備させろ」
「はい」
「それと、大型駆逐艦、中型駆逐艦を合わせれば、三十万隻になるはずだ。それも使う」
「足りますか?」
「足りない分は、どんな船でもいい。超光速が出せる船なら、すべて徴収しろ。そして、出来うる限りの人間を乗せるんだ」
 かくして、銀河連邦の大宇宙船団は、ナリシスの指揮のもとに琴座へと向かった。
 超新星爆発を起こしてギラギラと輝いている星を、五パーセクの半径で、膨大な数の宇宙船が取り囲んだ。
「どうだ」とナリシスが聞く。
「爆発の第一波が去りましたから、あと二分です」
「よし」
 ナリシスは、マイクに向かい、宇宙船に乗り組んだ銀河連邦の人々に呼びかけた。
「あと二分。では、諸君、楽しんで下さい」
 マイクから離れると、用意された長椅子に横たわる。
 冷静沈着といわれたナリシスの顔に微笑みが浮かんだ。
 なにしろ、広大な銀河の中でも最大、最高のイベントが二分後に始まるのだ。
 興奮し、そして微笑みも浮かぶというものである。
 SNⅢ型超新星爆発によるクォークの励起は、えもいえぬ音楽となるのであった。
 神話に出てくる天上の女神が奏でる琴の音も、これにはかなうまい、と誰もが思った。

 

─Fin─

 

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