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南関東文科大学 タイムカプセル発掘隊 第二話 教授選への「ダシコミ」(後)

   

二人組の警備員に見つかりそうになった松下たちだが、集中力を発揮して、何とか彼らをやり過ごす。しかし、その直後、小柄な少女にしか見えない警備員に声をかけられてしまう。

少女警備員の不思議な威圧感に、松下が動けなくなってしまった中で、一般人であるはずの坂上だけは、平然と少女に歩み寄り「交渉」を開始するのだった……

 

(後ろから倒すか!? ……いや)
 警備員を前にして、一瞬、稲妻のように脳裏に浮かんだ衝動を、松下は必死で打ち消した。
 もし仮に倒せたとして、その後どうするかのプランはまるでない。
 気絶させたとしても、相手が蘇生するまでに任務を終えるのはまず難しいし、そもそも、縛り上げるためのロープすら用意していないのだ。
 手は、出せない。
 松下たちは結局、死角に潜り込んだまま、息をひそめて、相手が行き過ぎるのをじっと待つことしかできなかった。
 足音が少しずつ、少しずつ近付いてくる。
 こつこつという、革靴の乾いた音が、松下の心に響く。落ち着けと思うほど、胸の鼓動は高鳴り、息が苦しくなる。
 今までのこの手のピンチは何度も味わってきたが、決して、慣れるようなものではない。千夏も新藤も、強張った表情で、ただ時が過ぎるのを待っている。
(早く、早く行ってくれ、早く!)
 松下は、無表情のままで、柄にもなく強く念じていた。こんなことに神経を使っても、集中力が削がれる分マイナスにしかならないなんてことは、頭では理解できているが、警備員がこちらに来ないという根拠がない以上、願望にすがる以外にないところは確かにあるのだ。
 松下は、息を止めて、かろうじて無表情をキープしつつ、警備員が去ってくれるのをひたすらに待った。
「いやあ、まったく、やってらんねえよ。小僧たちがちょっとうるせえからって、臨時雇いのバイトに入らされるとはなあ」
「本当ですな。まあ、あの人はいつも割のいい仕事を振ってくれるわけですから、断るわけにもいきませんしねえ」
 緊張感のかけらもない警備員たちの声が、徐々に小さくなっていく。
 どうやら、こちらには気付いていないらしい。松下は、はやる心をどうにか抑え込んで、僅かに響く足音が、完全に消えるタイミングを待った。
 硬質な音が、風景に紛れるように、かき消えていく。

 

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