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小さな池の、小さな橋で

   

 とある山奥の村の、小さな神社。
 美しい娘が境内の小さな池に佇んでいた。
 池をまたぐ、小さな石橋の上から、静かに水面を見下ろして。

 突然強い風が吹き、巫女姿の彼女の緋袴をばたばたと揺らす。
「……来た」
 袴がめくれあがり、すべすべとした処女の尻が剥き出しになった。
 彼女の背後から、人のものとは思えぬ、低い声が囁きかける……。

 テーマ企画「祈り」参加作品の読切短編です。

 

 
 両親に手を引かれ、少女は境内の奥へとやってきた。
 伝統ある古い神社ではあるが、山奥の寒村にひっそりと佇む、小さな田舎の神社である。
 まだ三が日だというのに、初詣客の姿はほとんどなかった。

 人目を避けるように鎮守の杜の奥へやってきた三人は、ふいにぽっかりと現れた池のほとりで足を止めた。
 子供が縁を駆け巡るのが似合うような、小さな池だ。
 黒く濁った水面には、蓮の花も魚影もなく、岸辺にはのどかに花が咲いている。

 両親の間にいた少女が、ふっと前に進み出た。
 黒い鏡のような水面を見つめ、何かを決心したように目を閉じる。
 それから、肩に羽織っていたものを取り、母親に渡した。
 中から現れたのは、美しい巫女の姿だった。

 無垢な白装束に、目に眩しいほどの緋袴。
 髪をあげてうなじを見せている少女の容貌と相まって、なんとも清楚である。

 その肩に手を置き、父親が不安そうに我が子に声を掛ける。
「大丈夫かい、沙耶。その……いまならまだ引き返せるんだよ」
「大丈夫です、お父様。村の皆のためですもの。私、怖くなんかありません」
 清楚な少女は、微笑みで答える。
 長い黒髪、抜けるような白い肌。純和風の美しいなでしこだ。

 羽織りものを手にした母親が、おろおろと泣きそうになる。
「危ないと思ったら、すぐに逃げるんだよ。お母さんたちは家で待ってるからね」
 美しい大和撫子は母親にも微笑む。
「危ないわけがありませんわ、お母様。神様はきっと良いようにしてくださいます」

 心配いらない、と微笑む娘を残し、両親は名残惜しげに去っていった。

 

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