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ラブストーリー

恋は朝焼けの雲に乗って<前編>

   

組長の娘として産まれて17年。
わたしは始めて恋をした。

ヤクザと言っても、昔気質の『極道』なんてイメージはすっかり消えてしまった極道一家。
その安穏とした組事務所に眼光鋭いヒットマンが居候することになった。
この男こそ男の中の男!
私はある日の夜、意を決してベッドに忍び込んだ──

「現代ヤクザ」の娘(17歳)と「鉄砲玉」武本(25)のラブストーリー。

 

 組長の娘として産まれ、組長の娘として育ち、早17年。
 わたしは大自然と動植物が好きな少女へと成長した。
 そして、17歳のわたしは、恋をしてしまった。
 ちょっと遅めだがなんと初恋である。
 その相手は、最近家でよく見かけるようになった、細身で小柄なヒットマン。
 眼光するどい男前で、名前は武本と言うらしい。
 25歳で、関西方面では名うての鉄砲玉として知られた男なのだと言う。
(ちなみにうちは北関東の組である)
 だから彼は特別な客として、うちの自宅兼組事務所に悠々と寝泊りをしている。

 暴力団というと、組長に命を捧げてくれる組員が何人もいると思われがちだが、実際はそうでもない。
 特にうちは、平和な時期が長すぎて、「鉄砲玉」なんか実は皆無である。
 若頭である、年の離れたわたしの腹違いの兄も、関西の坊ちゃん大学を出て、趣味はスキーとテニスだそうだ。
 父である組長も、昔はそれなりに気合の入った極道だったらしいのだが、齢70歳を過ぎ、今じゃすっかり健康オタク。
 うちのリビングは、テレビショッピングで父が購入した健康器具で溢れかえっている。
 望みは、畳の上ではなく、病院のベッドで死ぬことだそうだ。
 ま、今はそれが普通だしね。
 しかし、極道のセリフとしてはどうなのだろうか。

 母は母で、自分の経営する不動産会社の運営に忙しく、雰囲気としては、「極道の妻」というよりも、「女実業家」と言ったところ。
 前妻である兄の母が亡くなってから嫁入って来てわたしを産んだ。
 それまでは本人曰く「普通の愛人」だったそうである。
 まだぴちぴちの40代。
 異様に若く見え、まだ30代そこそこにしか見えない。
 下手すると、兄よりも若く見える。
 実際、二人はそう大して年が違うわけでもなく、父と母は一見したところ親子に見える。わたしに至っては、おそらく父の孫にしか見えないだろう。

 そんなことはまあ、いいのだが。
 なんといおうか、極道一家としては、うちは腐りきったというか、自然にそうなってしまったというか、時代の流れというか、まぁ仕方ないとでもいうか、そんな状況だったのだ。
 それなのに。

 

-ラブストーリー

恋は朝焼けの雲に乗って< 第1話第2話

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