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ハードボイルド

南関東文科大学 タイムカプセル発掘隊 第四話 企業内要塞学校(3)

   

 その後、各員が配置されるセクションごとに説明が行われ、正式に業務開始となった。
 七十名は、それぞれ、事務や工場、食堂といった、企業中枢部からは離れた、かつて派遣社員が入っていたところに割り振られ、仕事をするという手はずになっている。
 もちろん、バイトですらない「実習」扱いなので、そこまで難しいことを要求されるわけではない。
 少しの経験があれば問題なくこなしていけるレベルで、アルバイトの経験が豊富な学生たちなら、特に大きなトラブルもなく、仕事を進められるように思われた。
「いいねえ、端末の操作、バッチリだよ。コードを読んで、データを呼び出して、照会する。貸し出し業務は、それだけで済むから。で、返却された本は、背表紙のシールを参考に、元あった場所に入れる。やるべきことはそれぐらいだね。後は、普通に受け答えしてくれればいいからさ」
「何とか、頑張ります……」
 松下たちの面接を担当した男が、やけに上機嫌な声で業務説明をしている。
 新藤は、そんな男に対して、気圧されたようにおずおずと頷きながらも物凄い速度で端末を叩いている。
 どうやら、新藤とこの部屋にある機器の「相性」はなかなか良いらしい。
 松下と新藤は、胸に緑色のエプロンを着けていた。
 この「白波カンパニー図書館」で働く人間のユニフォームのようなものだ。
 さすがに日本における権益の一翼を占める巨大企業が設立した図書館というだけあって、松下が知っているどの図書館よりも洗練されて美しく、蔵書も、専門書や実用書などを中心に、二十万冊を超える。
 南関東文科大学の図書館と、ほぼ同数の本が納められているというわけだ。
「リクエストはこっちの用紙に記入してもらう形になるけれど、基本的には、新規にカードを作るってことは無いよ。社員証を流用する形になるからね」
 小倉という名札を付けた男は、ポケットの中から、一枚のカードを取り出した。
 名刺大の大きさで、所属と名前が書かれていて、下部に、食品用のものよりは少し短いバーコードが刻まれている。
 これをリーダーで読み取ることで、個人認証をするという仕組みなのだ。
「ハイテクですねっ。僕らのところなんか、未だに紙ですよ。紙に写真を貼っただけの認証手段なんて、今風じゃないですよ」
「きっかけ」を掴んだ喜びを、実習生らしい、無邪気な笑みに変換して松下が語ると、小倉は、あははと小さく笑って応じた。

 

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