幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ハードボイルド

南関東文科大学 タイムカプセル発掘隊 最終話 埋蔵された巨謀(8)

   

「さすがに現物見りゃあ分かるか。そう、空の薬莢だよ。銃弾の残りカス的な。まあ、この区画じゃあ、小石よりも珍しくない。地雷や砲弾ぐらいじゃ、値がつかねえんだからな」
 巨漢の男は、事もなげに言い切った。
 実際、周囲を見回してみると、掘削に邪魔な石ころを、その辺に寄せるぐらいの気安さで、プロテクターに身を包んだ作業員たちが、外側がぼろぼろに錆び、信管が抜けた砲弾や地雷を、無造作に積み上げている。
 中には、土にまみれた小銃や歩兵砲の類を、伐採した木の枝のように横たえた傍らで土を掘っているグループもいる。
 皆があまりに自然な形でやっていたので、すぐには分からなかった。
 危険な現実を認識した松下の全身から、嫌な汗が噴き出してくるのが分かった。
「……あ、あのう」
「何だ、兄ちゃん。俺の名前は上岡だ。班長でもいいし、好きに呼べよ」
「松下です。そ、それは不発弾の類いでしょうか。発掘のついでに出てきた、的な」
「いきさつは知らん。ただ、島はこいつらのおかげで持ってるようなもんだ」
 松下に対して、上岡はにっと頬を歪めた。笑うとより凶暴さが前面に押し出されたように見える。二谷とは正反対の笑顔だ。
 上岡は、自分の業績を誇るように、松下を見据えて言った。
「この島には、とにかく多くの人間がいる。裏から島を操っているような連中も含めると、かかるコストは膨大だ。じゃあ、そいつらをどう養うか。結局は必需品でもない化石や琥珀、格闘技の試合ぐらいじゃ、まるで追いつかねえ。ま、原資がかからないのはいいにしても。要するに、本当に稼いでる、別の特産品があるわけだ。軍事物資だよ」
「ゆ、輸出を、ですか。まずくないですか?」
 松下は、喋りながら、思いがけず危険な場所に足を踏み入れてしまった探検家のような気分を味わっていた。気を張っていないと、声だけでなく全身が震えてきてしまいそうだ。
「そりゃあ、まずい。でもよ、だからこそおいしいんだ。俺たちの稼業は、ヤバいことをやって大金をものにしてナンボだ。ここで掘ったものも、連中に四割リベートやっときゃ、絶対安全なルートから流せるしな。離れ小島で土掘ってるだけでカネになるんだから、実際おいしいぜ」
 上岡は、心底嬉しそうに語ってから、そのナイフのように鋭い目で周りにいる作業員をぎろりと見回し、迫力満点の声を張り上げた。

 

-ハードボイルド

シリーズリンク

レビュー

この作品はいかがでしたか?
あなたの感想を送って、作家を応援しよう!

レビューを書く

おすすめ作品

GunDaddy&GunDaughter~ガンダディ&ガンドーター~第8話

南関東文科大学 タイムカプセル発掘隊 第四話 企業内要塞学校(10)

南関東文科大学 タイムカプセル発掘隊 第二話 教授選への「ダシコミ」(前)

Egg〜ノクターン〜episode3

44口径より、愛を込めて episode14