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ハードボイルド

南関東文科大学 タイムカプセル発掘隊 最終話 埋蔵された巨謀(8)

   

「なかなか見どころがあるな、兄ちゃん。厚意を無下にしない奴は好きだぜ」
「はっ、はあ……」
 結局、かなり悩んだ末に、松下は、手渡されたチケットを「即日行使」することにした。
 千夏などは、「できる限り慎重に」という意見だったが、機嫌を損ねれば、即処刑されかねないこの状況では、保留もできなかった。
 二谷はかなり好意的だが、彼も大きな責任を持つ立場だけに、本当にこじれた場合、身を呈して松下たちの肩を持つまでのことはしないだろう。
 故に、ほんの少しでも、上岡の機嫌を損ねるような選択肢は取れなかったのだ。
 上岡が無線で呼んできたのは、ボンネットがないオープンカーだった。
 ただ、高級車というわけではなく、真四角の分厚い無骨な車体で、まるで石炭を運ぶトロッコのような雰囲気だ。
 松下たちが乗り込むと、その車は、実際に線路を走る荷車のように、滑らかに進み出した。
 運転手はいない。
「外」の世界では、まだごく一部でしか導入されていない、完全自動運行システムによって動いているらしかった。
「別に顔を隠す必要はないぜ。看守連も見て見ぬふりさ。地上はともかく、地下の『領土権』は誰のものでもない」
 上岡はそう言って豪快に笑ったが、嫌でも人の注目を一身に集めるデザインの車に乗っているわけで松下は気が気ではなかった。
 もっとも、車が作業区画を離れていくにしたがって、周囲から人の姿も消えていったので、あまり長々と居心地の悪さを味わうことはなかった。
 むしろ、代わりに沸き上がってくる不安と恐怖の感情の方が深刻だった。
 ごつごつした、草も生えていない赤い岩肌を横目で見ていると、本当についていって良かったのかという疑念が、頭をもたげてくる。

 

-ハードボイルド

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