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幻想 / 夢幻

幻影草双紙26〜バーの名前は『行蔵』2〜

   

 カウンターは欅の分厚い一枚板。
 細かい牡丹杢の木目模様には、ドライなジャズが似合う。

 

 東京、霞ヶ関に近い街の一角。
 一流企業のオフィスビルが並ぶ所である。
 そうしたビルの一つに、〈かがみ・デンタルクリニック〉があった。
 デンタルクリニック。
 つまりは歯科医院である。
 場所柄、顧客には、政財界の大物が多い。
 一部上場企業の社長や重役。
 さる野党の要人は、引退して伊豆へ引っ越した後も、治療を受けに、わざわざ、ここへ通っている。
 数年前のことだが、時の総理大臣が、この歯科医院で治療を受けている最中に、「あっ」と声を出したことがある。
「おい君、治療中に悪いが、電話を貸してくれ。思いついたことがある……」
 総理大臣は、官房長官を呼び出して、相談を始めた。
 この相談が発端になり、半年後に行われた選挙で圧勝したのである。
 〈かがみ・デンタルクリニック〉院長の各務三郎は、これが自慢であった。
 ウチの治療室で日本が動いた、というわけである。

 

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