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恋愛 / ラブ・ストーリー

奏でる愛と書き綴る愛! 完

   2015年3月27日  

 千寿は、ネオンが明滅する新宿の街を歩いていた。どこかへ向かうところだ。携帯電話のナビ機能でその目的地へめざす。すると30階建てのビルの最上階にあるバーであることがわかった。
 エレベーターで30階へむかう。しんと静まり返った薄暗い廊下が広がる。ダークブラウンの絨毯が廊下全面敷かれている。雰囲気からして高級感をかもしだしている。
 すると、左側に全面窓ガラスで、新宿の夜景が広がっていた。赤、青、緑、黄、紫、白、ピンク、オレンジ、とさまざまな光が明滅している。その光景を見つめ、どんな人間たちが自分の物語のなかで生きているのだろう。そんなことを考えながら、歩をゆっくりと進めていた。
「この店?」
 高級感あるBARに、千寿は敷居が高そうでやや緊張しながら入店する。
 店員の男が接客に応じる。
「お一人様ですか?」
「いや、待ち合わせている」とおぼつかない言葉でいった。
「お待ち合わせの方のお名前をおしゃっていただけますでしょうか?」
 男は丁寧にいいながら、来店リストのボードに目を通していた。
「ええと、どっちの名前だろ、ヤマトってひと…」
 千寿がそこまでの名前をだすと、すぐに察したようで、店員の男は、かしこまりました。と待ち人のところへ案内する。
 夜景広がる窓越しにひとり、男がすわってカクテルを飲んでいた。
「よっ、ひさしぶり」
 ヤマトは気さくにいった。いつものヤマトだった。店内は薄暗いが、ヤマト自身からは超一流ミュージシャンという覇気を放っていた。
 入店したときから、その気配を感じていた千寿だった。
「相変わらず派手さがあるな」
「そうか、どこがだ?」
 上下黒色のレザーで決めこんでいるヤマトに派手さはない。
「見た目ではなく、存在そのものだ。店員に案内されなくてもわかったよ。どこにいるか」
 千寿は、ヤマトのむかいにすわった。
「お飲み物は?」店員がふたりの会話に当たり障りないようにいった。
「ビールでいいよ」千寿はいった。
 かしこまりましたといって去っていく店員。
「で、どうしてた?」千寿が間髪いれずにたずねた。
「まぁ、いろいろあってな」
 はぐらかすヤマトだが、すでに報道されている事実はどこまでが本当で偽りか、それはわからないが信憑性はあると、千寿も認めていた。
「解散のことで引きこもっていたって本当なんだな、やっぱり」
「ああ、そうだ。でも、おまえのおかげで立ち上がるための魂に火がついた」
 ヤマトの誇らしい笑みがみえた。
「そうか」
「ああ」
 店員が千寿のビールを持ってきて、ふたりはそれで乾杯をした。

 

-恋愛 / ラブ・ストーリー

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奏でる愛と書き綴る愛!<全4話> 第1話第2話第3話第4話

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