幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

恋愛 / ラブ・ストーリー

奏でる愛と書き綴る愛! 完

   2015年3月27日  

「もう、だいじょうぶだな」千寿は確認のためにきく。「だいじょうぶなら、これからのことを話そう」
「もちろんだ。そのためにおまえを呼び出した。もう一度、俺自身が自分に置かれた位置づけを確保しなきゃ。自分の領土を取り戻す。そのために力を貸してほしい」
「わかっている。俺たちの夢もまだ継続中だ。というより終わりのない夢だろ」
 ふたりが約束した夢は出会ったときにある。千寿の監督兼脚本した作品に音楽制作をするのがヤマトである。これは鉄則。これまで3作品完了しているが、これからまだまだ制作は続く。ここで終わってしまっては、千寿の心もさがってしまう。共にめざすものがあるからどんな苦難でも乗り越えられると思っている。たとえ制作自体は孤独でも、ひとつの作品をひとりで完成させることなど不可能だ。誰かしら協力、尽力があって成し遂げるものだ。
 仲間でありながらも、ライバルといってもいい。ジャンルはともかく、好敵手と書いてライバルだ。
「娘のためにも、がんばらないと。俺には音楽しかない。いつまでも奏でていきたい」
 ヤマトは静かに話すが、その言葉には鼓舞の力が宿っていた。
「そうだな。一番大事な存在だ。守っていかないと。俺にも書き綴る意味があるからな」千寿は奄美が等価値であった。
「でもそれだけじゃない。俺が落胆していたとき、ある手紙をみつけて、それを読んだら力が抜けてしまって」
 ヤマトがそっとジャケットの裏から取り出した。
「なんだいったい?」
「一美が俺に宛てた手紙だ。ちょっと部屋の整理したときに見つけた。読んでみるか?」
「いいのかよ、そんな大事なもの…、でもそれっていつ書いたものだ? 生前に宛てたものか、それとも亡くなることわかって宛てたものか?」
「確実に生前だ。たぶん、俺に謝罪をしたくて、宛てたのだろうな。文面からもそう思う」
 千寿は、そっとその手紙を持った。どこか後ろめたい、なんともいえない仰々しさをその手紙にはあった。

 一美からの手紙は、
「通さん、ごめんね。こんなことになって。寂しさからはじまったことだけど、心の隙間をあなたの愛で詰め込んでほしかった。あなたは満たしていると思っているかもしれない。でも、私にはその実感がなかった。空っぽにだった。それはあなたの愛も同様に。信じていればそれでよかった。でもどうしようもない感情が崩壊してしまった。すべて私が招いたこと。弱い心が信じられずに、子どもにも手をあげてしまった」
 一美が音々に手をあげた? 千寿は目を見開いた。
 続きを読む。「とてもひどいことをした。何度も謝っても許してもらえないとわかっています。でも、あなたもあの子も愛している。私の身勝手な判断ではありますが、なにかで変わりになるものがほしかった。薄っぺらい他人の愛だとしても、それにすがるしかなかった。まだ若かったのかな。私が未熟すぎて、環境からも裕福すぎて自分を主張する場もなくて、なんのために生きているかわからなくなった。みずから自分の価値をさげてしまった。そう感じてしまったとき、私はもう今までの自分にはもどれなくなってしまった。こんなふうに謝罪しても、あなたに許されるとは思っていない。一度踏み込んでしまった世界は、まるで私に幻想をみせているようで楽しくてしかたがなかった。知らない世界はこんなにも私を恍惚にさせてくれるものだと。人間の罪のひとつ、欲の抑えがきかなくなってしまった。あなたが稼いだお金を他人の男に貢いで、そして取り返しのつかない罪を犯したことがわかった」
 浮気のことかと思った千寿だが、そのあとを読んで寒気を覚えた。
「体調に変化があったとき、記憶に結ばれた。それを理解したとき、もう消えるいがい答えはみつからなかった。ほんとうにごめんなさい。時間は多少かかるかもしれない。離婚して、あなたのまえから消えます。私には、あなたではない男性の子どもを身籠ってしまった。その罪を償う必要がある。私の身勝手を許して」

 

-恋愛 / ラブ・ストーリー

シリーズリンク

奏でる愛と書き綴る愛!<全4話> 第1話第2話第3話第4話

レビュー

この作品はいかがでしたか?
あなたの感想を送って、作家を応援しよう!

レビューを書く

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

おすすめ作品

love puzzle

もういちど、すきって言ってもいいですか 1

きみが困らなければいいけれど。 前編

壊れた夏休み 2話

犬が取り持つ恋もある 3