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ゴシック・ホラー

サクリファイス クロニクル編24

   

すれ違いを見せる二つの心。
全てを差し置いて、新たな戦いが始まろうとしていた。
次回、クロニクル編最終決戦突入!

サクリファイスと呼ばれる怪物を描いた、ゴシックホラーオカルトファンタジー!

 

「ありがとう。僕は、恨んでも怒ってもいない。寧ろ、感謝している。つまらなくて、くだらなくて、辛いだけの人生があの日変わった。こんなに楽しい、こんなに面白い。そんな風に感じられるのは、クレメンティーナ貴女のお陰だ」
 クレメンティーナの目から流れ落ちた雫が、月の光に反射してキラキラと光った。どんな宝石より、綺麗だと思った。
「時間は、短いように思えて、とても長いわ。愛する人と共にあれば、永遠ですら幸せに感じられると思っていた。でも、私達は所詮人間。移りゆく心を持つもの。永遠なんて、存在しないのかも知れない。けれど、私は独りで生きてはいけない」
「アーロンを愛しているから」
 クレメンティーナは頷き、僕の言葉に付け加えた。
「もう、独りで生きていく方法を忘れてしまったわ」
 アーロンとクレメンティーナ。長く、永遠を共にするパートナーとしては、最高の二人だと思う。そんな最高の二人でも、長い時間の流れというものは摩擦を生み、すれ違いを作る。ずっと変わらず共に歩むこと。それは、どんな宝飾品より魅力的で、どんな数式を解くより難しいことなのかも知れない。
 この夜は、クレメンティーナの下描きだけ終わらせた。考えすぎて眠ることが出来なかった僕は、遅くまで付き合わせたお詫びを彼女に入れ、休ませて部屋を出た。
 ロザリーナが気になり、一旦アーロンの書籍部屋に寄ると、彼女は本を握り締めたまま床で転がって眠っていた。近くの燭台の蝋燭はとうに燃え尽きており、炎は消えて冷たくなっていた。
 僕は、ロザリーナを抱き上げて、ベッドに寝かせた。彼女の寝顔に、キスをし、窓の外の月を見上げた。明るい月だとは思っていたが、この時初めて、今日が満月だと言う事に気付いた。
「綺麗な月ね」
 眠っているはずの、ロザリーナの声がした。
「起こしてしまった?」
「ごめんなさいね、シャルルのせいじゃないの。コルセットって、窮屈で」
「そう」
 僕は、笑った。
「ねえ、シャルル」
 ロザリーナがベッドから抜けて、僕の側に寄り添った。彼女の横顔が月光に照らし出され、凛とした表情がまるで聖女のように見え、美しいと感じた。
「薔薇十字団が現れたら、もうこんな風にゆっくり出来ないかも知れないわね」
「ロザリーナ、何があっても君だけは守るから」
 腕に抱いたロザリーナは、華奢で、繊細で、何より愛おしかった。

*****

 

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