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現代ドラマ

道 第十一回 スキャンダル

   

 
「皆さま、お寛ぎのところではございますが、ご来賓の皆さまからお祝辞を頂きたいと思います。最初に国会議員の・・」

演壇に登った国会議員の祝辞は飛翔展へのものというより、柴崎を称える言葉ばかりだった。

「しかし、なかなか〝政治家〟だよな。しっかり国会議員を押さえているよ。」

“俺たちに足りないのはこれだよ”とでも言いたげに、〝反柴崎派〟の一人が呟いた。

「続いて、特別審査委員をお務め頂きました栗原画伯から一言ご挨拶を頂きたいと思います。」

司会者の紹介で栗原画伯がマイクの前に立った。

「柴崎に栗原か・・つまらん。帰るとするか。」

〝反柴崎派〟は栗原画伯の挨拶も聞かずにパーティから消えていった。

飛翔展はその会期の二週間、大変な盛り上がりとなった。そして最終日には特選と審査委員特別賞をダブル受賞した高校生の松森治とアートサロン・シバサキとの専属契約発表と盛況のうちに幕を閉じた。

だが、もうすぐ梅雨入りとなる6月半ば、奇妙な噂が広まってきた。

  松森治は佐々木画廊がアートサロン・シバサキに売り渡し、その代わりに入選枠を3つ貰ったそうだ。

  実は、前田画廊にも持ち掛けたが、不正には加担しないと断られたらしい。共催を降りたのも、これが真相のようだ。

さらに、インターネット上にこれらの取引の模様を録音したとみれるテープがインターネットに流されて始めた。

これを一部マスコミが取り上げたが、開会セレモニーに参加した県知事、国会議員、そして県美術連盟が記者会見を開き、悪質な悪戯だと非難したため、騒ぎは直ぐに収まった。

「くだらないこと騒ぎたてやがって、負け犬どもが。」

騒動の火消しに飛び回っていた柴崎が2週間ぶりに栗原邸にやって来た。

「繁、1ヶ月程パリに行って来るが、気をつけろよ。」
「ああ、分かっている。政治家やマスコミには相応のことをしてあるから、これ以上の騒ぎにはならない。」
「しかし、お前にはそれだけ敵がいるということだから、油断するなよ。」
「ああ、分かっているよ。お前も体に気をつけろ。」

7月初め、栗原画伯はパリに旅立っていった。

 

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