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ハードボイルド

44口径より、愛を込めて episode14

   

 よって、数年大衆を中心に流通していたヘロインルートに関し、コーラカル・アヂーン大量虐殺事件の容疑者グループによるものだと警察は発表した。
 ここまでの報告内容に関しては、私自身に直接関係が無い分、好奇心とも使命感とも呼べる気構えで読んでいく事が出来た。
 問題は、ここから先だ。
 事件当時の状況について目を通す。震える手で、第一次コーラカル・アヂーン大量虐殺事件のページから捲っていくと、目を背けたくなるくらい、悲惨な写真が何枚も貼り付けられていた。
 白目を剥きながら、眠ったように死んでいる人。行き倒れる様に、うつ伏せに死んでいる人。出入り口及び窓際で、山の様に積み重なる死体。飛び散る血液、肉片。血飛沫の付いたドア、壁、床。…吐きそうに、なった…。
それでも、読み進めなければと思った。
 当時の状況はこうだ。五年前、土曜日二十時頃。海と隣接する港ホテルより、警察に緊急通報が入る。通報者は、二階に宿泊中の男女五名と三階に宿泊中の男女三名、計八名。尚、ホテルは10階建てである。通報内容は、一階から悲鳴と銃声が聞こえる。直様、ホテル全室へ部屋から出ないようにとの緊急連絡が入れられる。
 五分後、現場に二台のパトカーが到着。同時刻、駆けつけた警察官が手榴弾による爆発音を聞く。救援要請、最終的にはパトカー五台、救急車三台、消防車一台、ヘリコプター一台、海上船一台が出動。警察、機動隊、自衛隊がホテルを包囲。ホテルより、逃走に成功した女性、三ツ木玲奈、事件当時21歳を保護。約二時間後、機動隊による強行突破にて犯人グループの逮捕に成功。犯人グループは、ガスの流れない三階に逃げ込んでいた。全員座り込み、様子がおかしかった(この時、ヘロインを投与していたと考えられる)。
 ホテル一階に居合わせた客、男女合わせて八十二名が死亡、一名が重傷。うち、ガスによる窒息死が六十五名、十七名が銃殺されていた。
 犯人グループのホテル侵入ルートが、ホテル一階見取図に赤い矢印とバッテンにて書き込まれている。犯人達は、全ての出入り口である非常口三箇所、正面玄関、駐車場玄関から潜入、エレベーター、階段を塞ぐ様に客を撃ちながら動き回ったと考えられる。
 生存者一名について。と書かれ、写真が一枚載せられていた。集中治療室だと思われる場所で人工呼吸器、心電図モニター、点滴等で繋がれた包帯まみれの人間だ。これが、救出直後の大雅なのだろう。包帯の間から覗く皮膚は紫の混ざった土色で、布の上からでも解る程、顔も身体も酷く浮腫んでいる。……胸が、痛い……。目を背けるように、記事に視線を移した。そこには、簡単なプロフィールから記載されていた。
 被害者所持の身分証明として、運転免許証より確認。名前、水上爽介。男性。(事件当時)二十三歳。九月十日生まれ。本籍、住所。身長一七三センチ、体重六十五キログラム、血液型A型、健康状態良好であったと予想。父所有の一戸建てにて、父、母、弟と四人暮らし。地元の調理大学、栄養・食物学科を卒業後、フレンチレストランにて在職中であった。
 事件当時の状態とし、一階レストランの割れた窓枠下、遺体の下から発見される。上には5つの男性の遺体が乗っていた。いずれも水上爽介を乗り越え逃げようとし、混乱の為の押し合いの末、ガスで窒息したものと考えられる。その為、下敷きにされた事による外傷性胸部圧迫症を負う。外傷性胸部圧迫症により仮死状態であったこと、顔を壁と床の隙間に向けていた事が、ガスによる窒息から免れた事だと考えられる。

 

≪つづく≫

 

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