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ミステリー

プラチナ・フィンガー〜女王陛下のダイヤモンド〜<6>

   

「ダイヤケースに被害は」
「ありません。警備員を張り付かせています」
「この煙では、長時間は無理ね」
「はい。十分ごとに交代させます」
 さすがに、ホテルにガスマスクは無いのである。
「ガスの排出は?」
「空調の排気を最高にしています」
「分かったわ。それじゃ、調べましょう――」
 三人は、目が痛くなるのを我慢して、部屋の中へ入った。
「爆発は、ここです」
 有馬剛史が示した場所は、部屋の奥であった。
 あたりには、ねじれた金属片、それに『パターソン回顧展』専用紙袋の破片が散乱していた。
「爆弾は、土産用紙袋に入っていたようね」と高橋美由紀。
「そうです。この紙袋なら、ちょっと置いてあっても、誰も気に留めません」
「爆弾は、催涙ガスを噴出させるのが目的……、ね」
「部屋にガスを充満させるには、最適な場所ですよ」
「中央警備室の録画を調べなければ、ならないわね」
「中央警備室へ行きますか?」
「いいえ。誰かに調べさせてちょうだい。何か分かったら、その録画を見せて貰う」
 高橋美由紀は、この夜が明けるまで、ダイヤモンドのある階を離れるつもりは、ないのであった。
 そこに、警察が到着した。
 高橋美由紀は、鑑識に、現場を調べるよう命じた。
 また、客からの事情聴取も手配した。
 高橋美由紀、有馬剛史、それにダニエル・ライアンの三人は、廊下へ出た。
 警備部長の有馬剛史は、携帯電話で話をした。
 それが終わると、高橋美由紀に報告した。
「社長に一報を入れておきました。出張で北海道なんです」
「報道関係は? 大丈夫ね?」
「広報部に連絡してあります。報道関係者は、下の階の会議室に集めさせます」
「分かったわ」
「打つべき手は、打ちました。あとは……」
 三人は、顔を見合わせた。
 同じ事を考えていたのである。
 ダニエル・ライアンが、口火を切るように言った。
「さすがに、ダイヤモンドのケースには煙が入っていませんね」
「他のケースには煙が入っている……」と、有馬剛史。
「顔見知りの者だけでやりましょう。なによりも安全が第一」と、高橋美由紀が断定した。
 単なる事件現場ならば、封鎖してしまうことが出来る。
 しかし、この展覧会は、明日も開かれるのであった。
 よほどの事がないかぎり、中止することは出来ない。
 なにしろ、色々な人々の、種々の思惑と、様々な利害が絡まっている展覧会なのである。
 明日も、普通通りに開催しなければならない。
 そのためには、今晩中に、展覧会の会場を、元通りにしなければならないのだ。
 そして、それを行うためには、会場で、多くの人間が作業を行う必要がある。
 シルバー・キャットは、その作業による混乱を狙っているのだろう、と三人は思っているのだ。
 シルバー・キャットよ、来るなら来い、と高橋美由紀は、心の中で叫んだ。

 

≪つづく≫

 

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