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恋愛 / ラブ・ストーリー

カセットテープ

   2016年6月17日  

 
 翌日、目を醒ますとあのカセットテープが消えていた。
 眠る前に自室の机の上に置いておいたのに。
 ちゃんと覚えているのに忽然と消えていた。どこを探しても『取材 1』と書かれたカセットテープは見つからなかった。きっと一生見つけることは出来ないだろう。僕にはもう必要がないのだから。
 きっと、あのカセットテープは次に誰かから必要とされるまで学校のどこかでひっそりと隠れているに違いない。そして、僕のように強い想いを募らせる人間の前にだけ姿を現すのだ。
 それがその誰かにとって幸か不幸かは別として。
 思うに、あれは誰かの願いを叶えるだけのモノだと思う。
 良い悪いの判断はあれ自体にはないのだ。
 僕がこちら側へ帰って来られたのは姉の存在があったからだ。
 もし僕が別の願い――たとえば誰かを憎んでいるとかそういう憎悪を持っていたら願いは叶えられ、その替わりに帰って来られなかったのではないだろうか。あの教室で見た大量のミズネズミは、誰かを憎んだ誰かのなれの果てなんじゃないかとさえ思う。
 それにあの湖面に立つ少女は見る者の心を反映する。
 僕があの女の子に姉を見たように。
 彼女は誰でもあって誰でもないのだから。

 ――もし古びた見知らぬカセットテープを見つけたら気をつけた方がいい。
 聴くも聴かぬも自由だ。
 けれど聴いた者の願いは叶えられる。
 それがどんな類のものでも。
 その結果がどうなるか。
 僕にはわからない。

 

 

-恋愛 / ラブ・ストーリー

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