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ハードボイルド

Egg~ノクターン~episode5

   2016年7月22日  

お互いがお互いを、同じ眼で見ていたのかもしれない。私は私に怯えていた、ララはララを受け入れようとしていた。ただそれだけの単純な答え。

ハードボイルドラブストーリー。
ビターな味をどうぞ!

 

「このマンションはね、チャペルと繋がっていて、そこで結婚式をすることもできるんだ。俺が引っ越してきてから、もぅ3組ものカップルが結婚したんだよ」
「へぇ」
別段、興味もなさそうに返事を返してやった。
エレベーターで7階に向かう。少し、頂上より下の階。それでも都会から近い分、夜景は綺麗だろう。少し、夜が楽しみだなと思った。
「ここだよ」と、案内された場所は、ララの匂いで一杯だった。

――どきん……と、心臓の鼓動が鳴った。

きちんと片付けられている……というより、いつでも引っ越せるような、そんな無機質で冷たい事務的な部屋だった。そして、何故か、痛いほど悲しくなった。
「何もない部屋だけど」
彼が、すまなさそうに苦笑を浮かべた。一人で暮らすには、広すぎる部屋だ。
「こんな広い部屋に一人で住んでるの?」
「あぁ、夜になると寂しいよ」
何かを隠すかのように無機質に笑いながら、煙草に火をつけた。煙草の火がじりじりと燃え、そしてそれをうつつに眺めていた。
「外で遊んでた子供達、時々遊びに来てくれるんだ。いつまで、遊んでくれるんだろうね」
私も、煙草に火をつけた。
「本当は寂しいの嫌いなんだ。でも、いつも独りぼっち。ただ、誰かと友達になりたかった」
私も、衝動的に呟いていた。考えるより先に口をついて出た。そして、それは不思議とララとハモったコトバだ。
「……友達にはなりえない」
お互いがお互いを、同じ眼で見ていたのかもしれない。私は私に怯えていた、ララはララを受け入れようとしていた。ただそれだけの単純な答え。『友達にはなりえない』、ララは私に、私はララに向けられたコトバなんだと感じた。今まで生きてきた中で一番痛いコトバのように感じた。たぶん、きっと。私はララを、ララは私を、強い人間だと思ったに違いない。コトバの重みはお互い違うはずなのに。
「私は、自分がなくなってしまえばいいのにと思ってる。死ぬことなんか恐れてはいない、けど、誰かを愛して失うことの方がよっぽど怖い。だから私は、自分を捨てたときからこれ以上持たないようにと思ってる」
ララが嗤った。
「悲しい女だな」
不思議と、厭味は感じられなかった。
「俺は、怖くて怖くて仕方がないよ。自分がなくなってしまうことが。泣いてくれる人がいないことが。誰もいなかったら、本当の孤独なんだと思うから」
煙草が、燃え尽きようとしている。
「フォックスは、強いんだ」
「否、逃げているだけ。過去から、罪から」
死を恐れない人間より、生に執着する人間の方がずっとずっと強い。強いはずなのに、死を恐れる彼の方が、何故だかずっとずっと小さく感じられた。

*****

 

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