新しいシリーズの誕生です。
シリーズの誕生に合わせて、第1話は、お目出度く、誕生の話にしました。
ただ、いささか問題もありまして……。
関係者が幻異の世界から出て来て、文句を言う可能性があるのです。
森林太郎が欧州を再訪したのは、明治22年の春であった。
目的は、政治情勢の視察である。
当時の欧州は、ハプスブルグ家とロマノフ家が角をつき合わせ、それにオスマントルコがからみ、複雑怪奇な政治情勢の模様を作っていた。
その情勢は、極東の資本主義列強の力関係に反映される。
明治政府は、政治情勢を見極めなければならなかった。
正式な外交視察も、もちろん行うが、隠密理の情報収集で、完璧を期さなければならない。
そこで白羽の矢が立ったのが、森林太郎である。
軍医として、以前、欧州に留学している。
そのお礼をするために、欧州を再訪する――。
こういう設定にすれば、疑惑を持たれることはないであろう。