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恋愛 / ラブ・ストーリー

コドモが寝た後で××× 第7章 小さな恋

   

 
「あのね、『ありがとう』って。あとね、『楽しかったね』って。書ける?」
「大丈夫。難しくないから、ちゃんと書けるよ」
 オレはまた画用紙に大きく平仮名で『ありがとう』『たのしかったね』と書いた。
 それを真似て書く雛菊ちゃんの顔は真剣そのもの。
 文字を書くって、凄いことだ。
 なんか彼女の姿を見て、そう思った。
 思ったことを紙に文字で書いて伝える。
 電子メールが主流になりつつある時代だけど、やっぱり手紙という手段は失くしちゃいけないと思った。
 なんとなしに読めなくもない葉書が仕上がる。
 読めなくても、きっと雛菊ちゃんの気持ちは海老蔵に届くはず。
 そうでなかったら、オレが拳骨のひとつでもくれてやる。

 雛菊ちゃんと入れ替わりに海老蔵が寝室に入ってくる。
 だいたい書く文句は同じだろうと思いながらも、オレは先に書いた画用紙をさり気なく隠す。
 後で丸めて処分しなくては!!
 海老蔵も、雛菊の『雛』という字に苦戦。
 やはり同じく、宛名と差出人住所はオレが書くことに。
「なんて書くの?」
「んっとね。『楽しかったね』『大きくなったらまた行こうね』」
「大きくなったら、ふたりだけで行くのか?」
「うん。今度はね、ボクがお金貯めて、連れて行ってあげるの。あのね、その時は、パパと雛菊ちゃんのパパも一緒だよ」
「――親同伴の婚前旅行?」
「こ、こんぜん……? って、なに?」
「いや、なんでもない。そしたら海老蔵、すっごく頑張って働かないと無理だぞ?」
「平気。何歳から働けるの? パパがしていたアルバイトっていうやつ。それをして、会社にもお勤めして、いっぱい稼ぐの」
「そうか。確か十六歳からじゃなかったかな。でも海老蔵。お勉強もしなきゃ、ダメなんだぞ。おバカだと、後々損するからね」
 6歳の子のこの希望と夢、いつまで覚えているかわからない。
 だけど、一生懸命な海老蔵を見ていると、応援したくなる。
「雛菊ちゃんのパパは手強いぞ。パパ、協力してやろうか?」
「――いいよ。それより、パパの方こそ、頑張らなきゃ。ママのこと、気にしないでいいんだよ。まだ、パパ、若いンだから」
 少し間を置いて言われたこの言葉。
 正直面食らった。
 いろんな意味で、気にせず頑張れと言われている気持ちになる。
「そうだな。パパも頑張らなきゃな……」
 

 

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