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SF / ファンタジー / ホラー

呼んでいる

   2014年2月20日  

 
確実に間違いなく切るを押しているのに、壊れるくらい強く何度も押しているのに、通話は切れない。
切れないどころか耳に当てていなくてもしっかりとあの声が響いて聞こえる。
『小松さん、ひとりでいっちゃたわよ。伊勢さんも追いかけていかなきゃ……ね?』
「何言っているの? いっちゃったって……」
切れない電話から聞こえる声に答えたつもりはない。
ただ自分に問いかけるように言葉に出してみてはじめて気づく。
唯香がいったのは、『行った』ではなく、『逝った』である方なのだと。
 

「いや、いや……やめて、何を言っているの? 聞こえない、私は聞こえていない……いやっーーーーー!」
 

『ダメよ、伊勢さん。最初に言ったでしょう?』
『こっちにいらっしゃいって。私、待っていたのよ、ずっと』
『あなたが思い出してまた来てくれるのを』
『だけどあなたは私の存在そのものを忘れてなかったことにして過ごしている』
『どうして? いつまで私は待てばいいの? 充分待ったわ』
『だからね、仕方ないから私の方から伊勢さんのところに行くことにしたの』

あの時の声が一方的に話す。

足元の方の布団がゆっくりと膨らむ。
その膨らみがまっすぐ私の方に向かって動いてくる。
私はかけていた布団を弾く。
ベッドに黒い渦のようなものが現れそこから変わり果てた友美が顔を出す。

 

-SF / ファンタジー / ホラー

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