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現代ファンタジー

マスクエリア 第五覆面特区〜一章 覆面マネー(3)

   

深夜の街で、清水と香西は、特に思い当たる節もないまま、大手ボクシングジム所属のボクサーから追跡されることになる。
理不尽な事態に立ち向かい、逃げる清水たちだったが、しかし、「黒幕」を名乗る者たちの姿は、理由なき抗争よりも更に異質で不可解なものだった。

 

「くそっ、何てこった」
 清水は、自分の肩にもたれ、ぐったりしている男に向かって吐き捨てた。しかし、耳どころか首まで真っ赤になっている、学者風の青年は、切れ長で整った瞳を開けようともしない。正直なところ、置き去りにしたいのだが、実際のところ、その選択肢は許されていない。
「おら、清水、香西、どこだ!」
「いい加減諦めて出てきたらどうだ」
 路地裏にまで、粗野な男たちの叫びが響く。大挙して押し寄せてくる連中は、この特区内でも五本の指に入る、大手ボクシングジムの会員たちだ。
 大体は十代の練習生のようだが、ライセンスを持っている選手や、試合に出ているプロもちらほら混ざっている。本業とボクサー業を両立させ、社会的に重い責任を持っている者たちが、路上での暴力沙汰に手を染めているというわけだ。
(どうしてだ、全く訳が分からん)
 清水は頭を抱え、左右に振った。この覆面特区内だったら、所定の治安部隊に袖の下を渡せば大抵のことは揉み消せるとは言え、試合を控えている選手たちが、無駄なリスクを冒してまで、自分たちを路上で狙ってくる理由が分からない。
 清水や高倉が公共のメディアでジムを侮辱したというなら話は別だが、今まで侮辱どころか、話題にしたこともないのだ。至ってオーソドックスなプロレス団体と、ボクシングジムの間には、本来接点などない。

 

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