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現代ドラマ

家元 第五部 和義と琴乃(前編)

   

 
妬み
 

琴乃は名取になってから、志乃の代わりに外部の催しで踊ることが多くなった。伸びやかな踊りに加え、美しく、性格も明るい、琴乃にたいする外部の評判は高くなっていた。

だが、出る杭は打たれる。

その言葉通り、こういう活躍を快く思わぬ者は当然のようにいる。特に古参の師範代たちは「家元の代わりは、うちが」と思っていたのに、自分を飛び越え、「琴乃ちゃん、お願い」と家元から可愛がられるのを見るにつけ、心穏やかではなかった。

こうした中で開かれた昭和43年5月の苑田流交流会。

琴乃が教えている生徒の踊りは手の動きが大きく、見た目の華やかさはあるが、足さばきが苑田流の型を外すなど、「ちょっと違わへん?」と囁く声が少なくなかった。

琴乃のあら捜しをしている者にすれば、これは恰好の攻撃材料となった。

「何を教えとるん。苑田流とは違う。」

踊りが終わると、こう言って顔をしかめる古参の師範代たちの声は家元の志乃の耳にも入っていた。

さらに、「家元、あれはあきまへん」と直接意見する者まで現れてきた。

こうなると、志乃もそのままには出来なくなってしまった。

「琴乃ちゃん、お稽古しばらく休みなはれ。」
「先生・・」

踊りを始めて10年、稽古を休むことなど教えたこともなかった。だが、このまま師範代見習いを続けさせる訳にはいかない。

 

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