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現代ドラマ

家元 第九部 継承に向けて

   

 
翌1月11日、苑田流の新年会を兼ねた幹部会が料理屋「小寿々」の大広間で始まった。

「年も改まったことやし、皆はんに新しい役目を務めて欲しい。」

このように前置きして志乃から新しい体制が発表された。

最初は大木早苗を筆頭師範代として取りまとめ役になること。これには、異論を唱える者はなく、「うちんような者が家元のお役に立てるか分りまへんが、頑張らせて頂きます。」と早苗が挨拶すると、全員が拍手で賛意を示した。

だが、琴乃が本部教室を引き継ぐことが発表されると、予想通り注文を付ける者が出てきた。

「三田村はん、あら失礼。正岡はんやな。本部教室は苑田の顔どす。恥をかかんようお願いします。」

家元である志乃の意向には反対は出来ないが、琴乃に対してやっかみも含めた複雑な思いがあることの現れだった。これに加勢する雰囲気が漂い、ざわついた時、鏡佐知代が立ち上がった。

「うちはもう引退した身やから、ここで喋る筋合いはありまへんが、一言だけお話しさせていただきまひょう。」

佐知代は背筋を伸ばして、すーと息を吸い込んだ。

「元旦に教室の床を磨いておるんは誰でっしゃろ?お稽古しとるんは誰でっしゃろ?大晦日の夜、最後に教室を出るのは誰でっしゃろ?」

佐知代が何を言おうとしているのか、その意図が図りきれず、誰も黙っていた。

 

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