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ハートフル

モモヨ文具店 開店中<33> ~日付スタンプを使っての琉華の覚え書き~

   

 
16,12,24
たしかこの日。
おじさんが「クリスマスだから店はしめて三人でご飯を食べよう」といった日。
あたしはおじさんに「そこまでしてくれなくていい」って言った。
しんようできねーから。
おじさんはしんようできる人だったろうけど、そのしんようをどうしたらもてる?(しんようってもてるとかもつとかでいいの?)のかわからなかった。
りいかはおじさんが作ったごちそうをたべながらびっくりしてた。
「おっさんもういいよ。あたしらふたりきりでくらすから」
そんなことを話したような気がする。
どうやってってきかれるのはわかってたから、フーゾクでとこたえはよういしておいた。フーゾクだとりいかといっしょにいられるしけっこーかせげるってネットに出ていた。そのときぼしゅうしていて、てんいんの人が「むかえにいきます」って言ってくれた。しんようできねーなら、しんようできねー場所でお金をかせいで生きていくほうがいい気がした。
それを話すと、おじさんはソッコーお店にでんわして、ぜったいにはたらかせないって話した。まだみせいねんですってこわい声でいった。
そのときのことはよくおぼえてる。
でんわをかけおわったおじさんは「すわりなさい」って言うと、「しゃかいでいきるすくないすべをそういうふうにつかってはいけないよ」とやっぱりわからないように言った。「自分を大じにしなさい」。
それがおじさんの一番のことばだった。
ぶったり、なぐったりしなかった。これも自分を大じにしなさいってことなんだっていうのはあとから気づいた。
そのときちょっとしんようできるかもって思った。
おじさんも親とかそういうのがないってわかったのはもうすこしあとだった。
 

27,09,05
琉華記す
おじさん(養父だが今でもこの呼称を使う。おじさんもおばさんもまったく気にしない)も支援を受けて大学まで行った人間だと聞いたのは商店街に居を移して生活に馴染みきってからだった。わたしとりいかの虫歯だらけの歯の治療が数年がかりで終わった頃だ。そのとき縁というものの不思議さに胸を打たれた。
おじさんがそうしたように、わたしも誰かに手を差し出せるだろうか。
ここ数年増えてきた子どもたちを前にして、とくにそう考えるようになった。
思春期まっただ中のりいかはもっと顕著で、人道支援に携わる仕事がしたいとことあるごとに言っている。おじさんもおばさんもなにも言わないけれど、応援しているのはわかっている。
わたしはたまたま、運良く、抜け出せたに過ぎない重度の貧困にいったいこの町のどれだけの子どもや親が未だとらわれているのかと思うと、ぞっとする。
商店街に移ったモモヨ文具店兼かふぇ みょうがは今日も盛況だった。ただ、ここに来られない子どもや親をどうするのか。
一人、長く休んでいる子に連絡を取りながらおじさんと考えている。
超少子高齢化が進む日の出県では、行政サービスが高齢者に偏りがちで、貧困家庭は自己責任論が前にも増して蔓延している。なんとかしなければと常々思う。
一部を救うのではない。全部を救うにはどうしたらいいのか。

 

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