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ハートフル

モモヨ文具店 開店中<33> ~日付スタンプを使っての琉華の覚え書き~

   

 
17,08,28
モモヨおばさんにさいしょにあったのって、このくらいだったっけ?
よくおぼえてないけど、あたしたちがおじさんのところにすみはじめてから一年がたったころだった気がする。
「おれのおくさんにあってくれるか?」といって、おばさんにあった。
おばさんはつきよので文ぼう具の店をしてる人で、おじさんとどうきゅうせいだった。
なんで一年もあいだがあいたかわからないけど、おばさんは、「こんにちは」とあたしたちをまっすぐ見て、はっきり言った。
「おじさんのおくさんのモモヨです」ともいった。
それからあたしたちの手をしっかりにぎった。りいかとはなんども手をにぎった。
女の人の手にしては大きくてがっしりした手だった。
さいしょはあんまり話さなかったけど、おばさんはあわてたり、おこったり、こまったりしなくてりいかが言うことをうんうんときいていた。
あたしは話すことはなくて、ぼーっとしていたら、「るかちゃんは」と言ったのでびっくりした。
るかちゃんなんてよび方、だれにもされたことなかった。
「るかちゃんはすきなものある?」
りいかがおじちゃんの卵やきといって、おばちゃんをこまらせていた。
話はいつのまにか、おばちゃんの家に行こうということになってるらしくて、そのときのご飯をきめてるらしかった。
「あたしすきなのないかもしんない」
これはほんとにわからなかったのと、おばさんにいらいらしてたのもある。
おばさんはきゅうに出てきてりいかをとっていきそうな気がした。
しんようできねー大人が一人ふえてこんらんしてた。
「そっか、じゃあ、なにか好きそうなものを作っておくよ。タカみたいに上手じゃないから期待されすぎても困っちゃうんだけどね」
おばさんはあたしをどうにかしてしはいしようとか、おもいどおりにしようという気がないみたいで、あたしが、ここはいってこないでよってところにはぜったいに入らなかった。
お節介なのがおじさん。
引くのが上手なのがおばさん。
そういう感じ。
 

27,09,05
琉華記す

おばさんと会うのに一年も経っていたのは、どうやら大人側のわたしたち受け入れの調整があったかららしい。らしいというていどにしかきいてない。ショックを受けないようにとか、ちゃんと馴染むようにとか、もっと根本的なお金の問題とか、おじさんが持っていた松野沢の販売経路の委託を解決したあとにおばさんとちゃんと会った。その後、数回会っているが当時のわたしの言う〝しんようできねー大人〟の感じやら、りいかを取られる感じは、なかなか払拭されなかったが、おばさんは人に対しての距離感が抜群に良かった。お客相手の商売は、人によって踏み込み方も、踏み入れ方もまるで違う。そこをおばさんは一瞬で見抜き、最初に会ったときは引いた。おばさんは決して無理をせず、わたしたちの心の揺れる様にまかせた。
おばさんとおじさんは太陽と月のような関係で、わたしたちの対面を企画しただろうおじさんは、わたしたちよりも緊張していた。今思い出しても笑える。おばさんにはもちろん突っ込まれていた。

 

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