幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

恋愛 / ラブ・ストーリー

オクターヴ上げて奏でる[1] ポロネーズ

   2017年12月11日  

 カラオケボックスで崇は今の気分を楽しむように、尾崎豊の《十七歳の地図》を歌っていた。多分、僕の気を紛らわそうとしているのだろうが、今、僕が抱えている問題は歌詞のような社会への反発ではない。
 一通り歌い終えると、崇は注文したアイスティーを飲みながら、「で、何があったんだ?いつものお前らしくないだろ。」と、訊ねてきた。
 僕は誤魔化すことなく、今の気持ちを崇に話した。今朝の出来事、そこに至るまでの経緯、麻衣子と別れたこと。そして今、奏子さんに抱いている想いを恥ずかしがることなく話した。
 僕が真面目に話すものだから、崇も笑うことなく話を聞いていたが、「もう、他人が見る外見とかは、気にしてないんだ。可愛いとかじゃなく、奏子さんが持っていて、自分には無いものに惹かれたんだ。」と言うと、その話には眉を顰めていた。
 僕的には奏子さんへの想いを表現する満点の言葉だった。だが、崇はその言葉を聞いて、お前の考えは零点だと言うような顔をしている。
「そもそも他人の目なんか気にして、誰かを好きになることがおかしいぞ。じゃあ、お前の母ちゃんは、そんなに美人だったのか?」
 崇の質問に反発して、「親のことなんか知らねぇよ。顔も思い出したくない。」と言うと、気まずい表情を見せながら、「そうか、悪い、悪い。」と言っていたが、それでも自分の意見を崩そうとはせずに、再び話し続けている。
「じゃあ、俺の話しをすると、親父は多分カッコイイ分類だろう。でも、母ちゃんを美人と思ったことがない。まぁ、ブスでもないが、普通だ。もし、顔が全てで結婚するならば、親父は何で母ちゃんと結婚した?自分の母親を褒めるのも恥ずかしいけど、母ちゃんは抜群にできた人間だと思う。性格も、料理も。それを見抜いた親父は、見た目以上にカッコイイと思うぞ。」
 特定の彼女など作らず、女遊びの激しい崇から聞く言葉は説得力に欠けるが、胸のつかえが取れた気にはなる。
 ただ、こうして人の意見を聞くことで自分の考えを正当化しているのが、今までの考え方と変わらぬ気もする。

 

-恋愛 / ラブ・ストーリー
-, , , , ,

シリーズリンク

レビュー

この作品はいかがでしたか?
あなたの感想を送って、作家を応援しよう!

レビューを書く

おすすめ作品