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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】23

   

 京介と美咲が愛し合い、ついに結婚した。しかし、忌まわしき19歳の誕生日の夜のことだった。

 あの日、美幸は姿を消したが月夜の魔力にでも魅入られてか、京介の寝室へと忍び込んだ。

 見間違うわけない双子姉妹だったが、そのとき京介は美咲だと思った。

 その夜二つの命がそれぞれに宿った。
 
 

 美幸がどこかの国で暮らしているというのも、すべて美咲が偽ったもの、本当は城里家にずっと隠れ住んでいた。

 それは三人の暮らしを懇願するがゆえの、京介が画策したものだ。

 身ごもった姉妹は十河医師さえも欺いていた。産まれてくる子供は通院の際に双子だということがわかった。

 まさかそれが美咲と美幸ともにおなじであったと…

 

 二人の女が京介を愛してしまった。幼なじみで家族ぐるみの付き合いのある染野一族の双子娘、このトライアングルが結果的に悲劇を孕んだ。

 美咲、美幸。100パーセント同じDNAで構成された二人は鏡に映したような存在。感情や心までおなじ。恋愛も同じ人を愛してしまう。生涯に同じ一人の男を愛した。それが京介だった。

 京介も双子娘が好きだった。二人を嫁にすることはできないことを知り歯がゆくもあった。どうしたら法律なんてくだらない障壁を打破できるのか思案していた。揺るぎない欲望と願望が、その法律に打ち勝つために京介はあることを思いついた。

 無粋なまでに若さからくる発想とでもいうのか、秩序ある者はそんなことはしない。無鉄砲だろう。

 もとより、その計画を実行するためには長い時間と一人の犠牲と協力者がいなければならない。隠蔽するには口封じも必要だった。

 京介の強欲を満たし、達成感にひたるためのゲーム。美咲と美幸もある意味プレイヤーとして盤上にいるが、みずからの駒を動かし、どのように京介と身をおくかを思案に共闘していた。

 悲劇しかない末路がみえているというのに、美咲と美幸は一心同体となってその身をおいた。

 恨みっこなしの人生ゲームを歩き進める。
 
 

 帰郷した京介の二十歳の誕生日。暑い夏の日の夜、京介は美咲とベッドのうえで身を重ねた。

 宴は終わり、静まり返る一夜の時間が流れる。

 そこへ青白い月明かりに照らされた艶めかしい裸体の美咲が寝入っている京介の顔を見下ろしていた。

 再び行為ははじまった。

 美咲は、自分がプレゼントと、ひと言つぶやいて全裸で京介に抱きついた。

「すきにしていいよ」

 京介は無言のまま美咲を何度も抱いた。何度も、何度も静まり返った青い光が照らす室内は二人の愛で赤く燃えあがった。

 迸る汗は月光の魔力に欺かれる。

 京介のうえに跨り身体をくねらせる女体は、美咲、美幸、その判別なんてどうでもよかった。見るものすべてをしっかりとその目を見開いているというのに、どうでもよかった。

 美咲はベッドの横に布団で包まり眠っていた。ピクリとも動かない。さきを越された美幸の憎悪は人間の貪欲と強欲からくる発想は、エゴイストといってもいいほど底知れぬものだ。

 美幸はひらめいた。「私、ひとりだけ孤独になるのはいや、美咲に成り変って、偽りの愛だとしてもわたしは京介さんの子どもを産む。私が美幸に成り変る──」

 双子でも美咲にない精神、根深さは美幸の心に宿っていた。ただ美咲がさきだっただけ、逆になってもおかしくないことだった。

 京介がさきに抱いたのが美咲、美幸でもそれはかまわない。

 正式な儀式の裏での強欲、美幸の女としての存在を生かすためにそれなされた。

 美咲になりすまし抱かれ美幸なりの未来を開拓したのだ。

 それは京介なりの企みだった。このさきの未来の対となるべく画策は宿っていた。

 疲れ果てた京介と美咲。乱れた毛布や布団はベッドのうえで無造作に丸まってしまった。美咲の体は布団のなかに包まってしまい、その姿は隠れた。

 京介は人の気配に気づいたのか急に目覚めた。ベッドの脇で女が立っている。

「美咲か」と問い掛ける。

「ええ」と美咲の声がした。

 再び熱く燃えあがる前の同意が交わされる。

 淡い月灯りがひきしまった女のからだを妖艶なまでに照らしていた。唇を交わす。生き血を啜りそうな魔女のような笑みに脈打つ鼓動の高鳴りが異様な雰囲気をかもしだす。

 疲れ果てるまでセックスをしたのにも関わらず、なおももとめてくる美咲の貪欲さに京介は迎えうつことにした。

 若さがあっての物怖じしない領域。

「わかっている」京介は耳もとで囁いた。

 その言葉に覆い被さる“美咲”は眼に涙を潤ませる。

 その女は“美幸”だった。

 

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