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ある素封家の没落 前編

   

「女中」という言葉は今では死語になってしまったかも知れない。

今とは違い、主婦の仕事が重労働だった時代、豊かな家は住み込み家政婦を雇うことが多かった。だが、その実は、人権無視も甚だしいことも見受けられた。

これからお話しすることは、ある土地の名士、「素封家」が、その家政婦に対する醜い行いの結果として没落していったものを語るものである。

まずは、戦前の出来事から見てみよう。

 

 
プロローグ
 

もう「女中」などという言葉はなくなってしまったのでしょうか?

辞書を引けば、「家庭・旅館・料亭などにおいて、住み込みで働く女性の、日本国内における歴史的呼称である。」、もっと無機質的に、「よその家に雇われて家事の手伝いなどをする女性。現在は『お手伝いさん』という」、「旅館・料理屋で、客への給仕や雑用に当たる女性。」などと書かれており、まあ、今の言葉では、「住み込みの家政婦」でもいいのかも知れませんが、やはり「女中」という言葉には、その独特の響き、味わいがあります。

昭和30年代(1964年以前)までは、今とは違い、掃除機、洗濯機などの電気製品は一般には普及していません。また、ガス、IHなど、とんでもない。薪で煮炊きをしていた時代です。ご飯の支度も大変。主婦の仕事は重労働だったのでしょう。

その中でも、例えば、地主だとか、商家だとか、住み込みで働く従業員を多数抱える家では、それに比例して家事も多く、沢山の「女中」さんが働いていたようです。

この仕事、「行儀見習に入る」、「女中奉公」などという言葉がある通り、花嫁修業的意味合いもありましたが、いい話ばかりではありません。

当時の家は鍵もかからない和室が殆どです。男と女が同じ屋根の下で暮らしていれば、間違いも起こります。

「書生と出来ている」、「植木職人といい仲だ」、これは当事者同志、了解していますから問題ありませんが、「旦那のお手付きだ」、あるいは「若旦那に手籠めにされた」など、性に関するトラブルも多かったように聞いています。

しかし、雇い主は支配的な階級、女中は貧しい家庭の女、誰も女中の言うことなんか耳も貸さない、今では人権無視も甚だしい、酷い側面があったことも否定はできません。

これからお話しすることは、このような醜い行いの結果として没落していった、ある土地の名士、「素封家」についてのお話しです。

それでは、現代とは違う時代風景などもお楽しみ下さい。

 

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シリーズリンク

ある素封家の没落 第1話第2話

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