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ある素封家の没落 後編

   

醜い行いの報いは必ずある。出征した次男は戦争で右腕と視力を失っていた。

そして、終戦。岩本家の栄華は過去のものになっていく。

農地解放で多くの田畑を失い、一獲千金を夢見た穀物相場にも失敗し、屋敷も小さくなった。

それでも懲りず、戦後も繰り返す女性への醜い行為は、一家を破滅させることとなった。

だが、最後に残った家族、そのような行為とは無縁だった者たちには、ようやく安らかな暮らしが訪れていた。

 

 
汚らわしい行為
 

母の綾乃の願いとは違い、義雄の女中部屋通いは収まらなかった。

「お坊ちゃん、いけません、そんなことは・・」

当主の大造に言い含められた女中頭は見て見ぬ振りどころか、新入りの女中には奥の一人部屋をあてがい、義雄が忍び込んでも騒ぎにならないようにしていた。

「茜、旦那さんが呼んでいるよ。」

大造は女中部屋に行くことはなくなっていたが、妻の綾乃が出掛けた夜に限って、「肩が凝った」、「腰が張る」などと女中を部屋に呼んではその体を弄んでいた。

長男の健輔は父と弟の行為を憎んでいたが、彼にも弱みがあった。

彼は今年、満20歳になる。当然、徴兵検査を受けなくてはいけないが、父の大造が在郷軍人会に働き掛け、「国家総力戦遂行の為に緊要なる業務に従事する者にして、必要欠くべからざる者」と認めさせ、「召集延期者」に組み入れさせていた。

「義雄、もう止めろ。」
「へへ、何を言っているんだよ、兄ちゃん。」
「みっともないぞ。」
「父さんに言えばいいじゃないか。」
「くそ・・」

弟からこう言われると、返す言葉が無かった。

だが、何事も行き過ぎは災いとなって己に降りかかるものである。

 

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ある素封家の没落 第1話第2話

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