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ミステリー

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】26 END

   

 古我を殺した犯人が長柄ではなかったことに京介と美咲は愕然だった。

 御影はせめて言い訳をして抗ってもらってかまわなかった。でも、嘆きの双子は素直に認めた。

 すべてが明るみになり、自分たちが誰かわからずにいたが、素性や出生がわかってほっとした様子だった。

 かばいだてするのは当然だった。長柄は自分の手で古我を殺めたかったのに、まさか…一番やってはいけない人たちが手にかけたことで泣き崩れていた。

 本人たちはすっきりとした顔で安堵していた。
 
 

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】完結

 

 御影は速見警部が長柄を連行するさいに付け加えた助言だった。長柄は誘拐犯の稲場を殺したのはまちがいない。だが、古我を殺したのは御影が速見警部に助言したとおり双子が起因となっていた。

「反論は」

 御影はせめてもの強がりでもいい、抗いでもいい、口論に身構えるだけのことは探偵として覚悟のうえで追い詰めている。

「ないよ」幸太はふっと息を吐いてほっとしたようだ。「よくわかったね、まったく見られていなかったと思ったのに」

 美香もにんまりと口を横にひろげながら強く深くうなずいた。

「そもそも勝手口のそとにすわりこむ長柄さんが不自然だった。勝手口の扉に右足を挟んで殺された古我の遺体、このふたつの状況は見逃せないことだった」

 長柄は台所ですわりこんでいるならわかるが、時間を稼ぐためにあえて死体をまたぎ、そとですわりこんでいた。

 古我は台所から逃げようと勝手口のドアノブをにぎったところで致命傷をくらって倒れた。ドアを開いたまま半身がそとに出た。そのときドアが左足首が挟まった。

 輪都に写真を撮らせた。鑑識よりも状況を把握して長柄が犯人か疑問があったからだ。

 犯行状況に疑問をもったから長柄が犯人ではないと御影は思った。

 たとえ台所で長柄がすわりこんでいたとしてもガラスの灰皿が殴打した痕跡から複数の箇所があるのはわかった。

 鑑識が調べ複数の人間がかかわっているという答えが返ってきていた。

「だからたどりついた。長柄さんは犯人ではなく、隠蔽したのだと。そしてあなたたちをかばいだてしたんだとね。嘆きの双子、幸太さんと美香さんが衝動的に襲ったんだってね」

 幸太と美香はしっかりと口を閉じたまま直視していた。

「もともとおかしかった。写真についてだけど、この二枚の写真」

 棚にあった二枚の写真だ。

「ほかの部屋だが、歴代の頭首の写真が飾られていた。そこには客間にあった写真と同様のものがもう一枚飾られていた。それがここにもある二枚の写真。同じ写真を二枚飾る意味ってなんだ…」

 御影は突如そんなクイズをだした。

「見比べれば一目瞭然ではないか」氷室が即座に答えた。

「一枚は陽太と美姫との家族写真。誘拐され殺されたから、もう一枚は幸太と美香との家族写真をあらためて撮った。もしくは誘拐後、成り変った二人との違和感を拭うために撮り直したもの」

「そうです、数年後の写真だがあまり変わっていない容姿には成長の遅さを感じさせますけど、京介が幼いころどうだったんでしょうね」

「ああ、そうだったな、たしか…それも十河先生にきいたわけだな」京介はおぼつかないしゃべりでいった。

 御影は十河医師に視線を送りうなずいていた。

 だが、まさか双子がそんなことをしていたとは思ってもみなかった。いちばんの部外者だと思っていたからだ。二人の思惑は長柄が古我を殺したと思っていたからだ。

「二人は親離れしたんですよ。ずっと心は嘆いていた。自分のなまえさえも偽らされ、だれかわからずに生かされていたんですからね。運命を自分たちで決められるだけの年齢になったんですよ」

 重苦しい地下の床にうずくまる京介だった。美咲は被せるように落胆していた。

 御影はこんな家族にかける言葉などなかった。忘れてどうでもいいような若かりし日の思い出を、缶詰にいれてタイムカプセルのように土をかぶせた。長い年月が経って偶然掘り起こした我が子たちの無邪気さに微笑むが、プラスチックの子供用スコップで庭を掘り返したのを見て蒼白した。忘れ去られた缶詰を手にし、開けてはならない災厄が閉じ込められていることを親は忘れていた。

 巻き込まれた子供は、親の罪を背負ったのだ。

「不幸のDNAは連鎖するようだな──」

 

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