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恋愛 / ラブ・ストーリー

君がいない世界なら、僕は生きていけない・1

   2018年1月10日  

 2034年12月24日

 クリスマスイヴの日。

 すばらしい一日を彼女と俺は過ごしていた。この日は将来を誓い合った約束さえ交わしたというのに、その夜…。

 とんでもない混乱が都心部のスクランブル交差点で起きた。

 悲鳴轟く一夜のサンタクロースに扮した男が、行き交う人々の中をすり抜けようとしたとき、悲劇は起きた。

 様々な音楽や賑わう人々の声で、警戒な音すら消してしまう。

 俺は気づかなかった。そのサンタクロースに扮した男が無差別に発砲した一弾が…
 
 


 苦い始まりで物語は進行します。過激な文面もあるかもしれません。

 SF作品です。

 

 2034年。この日はクリスマスヴ──。

 それは人々が浮かれ楽しむ一日のことだ。

 とある都心部のスクランブル交差点で悲劇が起きなければ、すばらしい聖夜を迎えることになっただろう。

 おかげでこのあと、報道では連日命名をつけて呼称した。

“クリスマスイブの惨劇”。

 あと数分でその惨劇は幕を上げる。

 スクランブル交差点はいつになく賑わいをあふれだしていた。街燈は様々な色が発光している。まぶしく輝き人びとの心を染め上げる。これだけ明るいとどこに誰がいるかはっきりとわかる。派手な夜だと感じながらも今宵だけはおあつらえ向きなスポットライトを浴びせてくれる最高の演出だった。

 俺はこの夜、とてつもない幸福感に包まれながら傍らにいる彼女と見つめ合いキスをする。そっと彼女の左薬指に触れた。顔を近づけ耳に添えるように囁いた。これだけうるさいと頬をぴったりとつけないと聞こえないほどだ。こんな都会の中心のような場所で抱き合っているが、あちこちで同じようなことをしている夜、許される夜、伝染する夜でもあった。

 それぞれの恋人たちの愛のふれかたを見てられないのか、神は天から静かに優しい演出を添えるよう花の粉雪を降らした。

 いつもなら身を凍てつかせ骨まで凍りつかせる真冬だというのに、浮かれた夜は人の精神を鈍感にさせるのか、それとも寄り添う愛が熱を帯びさせるのかもしれない。

 昼間は冬だということを忘れるほどの穏やかな気温と晴天だった。しかし夕方からうっすらと雲が広がりはじめ寒風が吹き込んでいた。

「えっ、聞こえなかった」微笑みながら彼女は聞き返した。肩まである黒髪に俺の手のひらは触れていた。冬の冷えた空気が体感してわかった。嬉しそうな顔をしているのはおそらく一度では信じられないのだろう。彼女の笑みを浮かべる唇が、もう一度いって、と期待をこめていた。

 粉雪は二人の熱に溶かされながら、そこに俺の告白はさらに熱を帯びる。

「結婚してくれるね」

 きみは待望の笑みを浮かべ嬉々とする。

「もちろんよ」

 満面の笑みというのはこういうことだろう。黒い瞳が潤むように輝き恥ずかしそうに頬があがる。

 俺はこの笑顔が見たいがために今日までいろいろ練ってきた。デートプランというものだが。

 きみに誓った愛の言葉と誓いの指輪が左薬指に輝きを放っていた。

 未来を誓いあった夜、クリスマスイブにしたのにはロマンチストといわれたいと思った。少なからず連れ添う相手となるのであれば、将来的にインパクトのあるプロポーズで照れ笑いをしたいからだ。

 満天の星空だったが雲が覆ったのは神が二人の幸福な姿を見たくなかったのだろう。

 だから顔を隠したのだ。

 20時00分。

 もしくはこの場所で惨劇が起きることをわかっていて目を伏せたのかもしれない。

 

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