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恋愛 / ラブ・ストーリー

オクターヴ上げて奏でる[6] きらきら星

   2018年1月10日  

 奏子さんに僕のセーターを着せて制服姿を偽ると、僕等はホテルへ入った。
 休憩二時間三五〇〇円。その間に愛を確かめ合う。
 奏子さんは過去にあった忌々しい出来事を、正直に話してくれた。その話を聞くと胸が締め付けられる思いになり、どうしても彼女の肌に触れたかった。
 離れる間もないほどに唇を合わせ続けた。初めはぎこちなかった彼女の舌が、僕の真似をして絡み合う。
「奏子さんの初めては、今日でいいんだよね。」僕の問いかけに、彼女は小さく頷いている。
 彼女を優しく抱きしめたい。そっと唇を合わせたい。けれど、彼女の髪に隠れた首筋を、うなじを、乳房を見た奴がいると思えば、その我を失い、荒々しさを出してしまう。
 僕は彼女と一つになって、強く、きつく抱きしめた。何度も、何度も。……
 しかし、彼女を抱きしめた後のシーツに、初体験の女性に見られる血の跡がないことに、僕は激しく怒りを覚えた。
「殺してやる!その男、殺してやる!」
 奏子さんが僕の背中に顔を当てると、零れる涙の温もりを感じる。その涙が、更に僕の怒りを駆り立てる。
 「ごめんね、ごめんね、……」と、小さな声で言っているのが聞こえた。
 本当ならば、僕がこのことを忘れることが、奏子さんを苦しめない一番の方法かもしれない。
 けれど僕には、男への恨みと、奏子さんの体を奪われた嫉妬が募るばかり。
「奏子さん、約束する。僕は何があっても、奏子さんを一番大切に思い続ける。だから奏子さんも、僕のことを一番に思い続けて。そうでないと不安で潰されそうだよ。……」

 明かりの落とされた部屋の中、彼女の頬が静かに揺れ動くのを、僕は背中に感じていた。
 
 

≪つづく≫

 

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