幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

恋愛 / ラブ・ストーリー

君がいない世界なら、僕は生きていけない・3

   2018年1月17日  

 俺は東学文明大学・工学系研究科工学部の恩師に会いにきた。

 だが、相変わらず研究室を独占して、なんかあやしげな研究を繰り広げているようだ。

 気にせず乗り込むと、そこは真っ白なビニールシートが膨らんでいた。

 どうやら恩師は何らかの実験をしているようだ。

 変人じみたマッドサイエンティストがビニールシートから顔を現した。

 俺は名乗ったが、ああ、ああ、という感じて流された。

 だが、とにかくそんなことはどうでもよかった。ここへ来たのには、先生の特質な研究に救ってもらいたいからだ。

 その研究とは…タイムトラベル。

 

 東学文明大学・工学系研究科工学部を六年前に卒業したが、いまだ講師をしている恩師に会いにきた。

 俺も工学部を専攻していたが、将来科学者になることを幼少のころから夢をみていた。でも、その専任の先生の奇抜さに毒を抜かれ、しごくまっとうな社会人としての道を選んだ。

「いると思うんだが」

 俺は懐かしい大学の代わり映えしない廊下を歩きながら工学部の教室へと向かった。だが、すぐにちらっと視線が横へ流れた。

 工学部の隣に研究室があり、Don’t Stopのプレートがドアにかけられていた。

 それはつまり、「あいかわらずくだらん研究中か」

 かまわずドアノブを握り、扉を開いた。

 無警戒で中へ入ると表のプレートの意味がわかった。

「なんだこの煙は…」

 禁断の扉を開いてしまった。せきこむくらい研究室内は煙が充満していた。透明なビニールシートが室内の中心でもくもくと真っ白な空間を包んでいたが、やはり少し漏れて室内に広がっていた。

「ちょっとしたボヤ騒ぎになるぞ、先生!」

 呼びかけるも応答はない。ただただ危機感を感じた。それだけ危うい存在がこの白い塊の中にいるのはわかる。

「ぶにゃ?」妙な返事が真っ白なビニールシートの中から返ってきた。

 俺は恐る恐る近づき、どこにいるか探るように頭を右往左往に振ってみせた。するとビニールシートに突如張りつくように顔と手のひらが映った。

 それは在学中とても世話になっていた恩師のつぶれた顔とご対面となった。

「やぁ、きみ…ひさしぶりだね…だれだっけ?」

 ピンポン玉のようなギョッとした目。白い髭を顎と鼻の下に蓄えている。いつも白衣をまとっているが、体型は普通だろうと思う。

 身長は俺の目線が少し上向きになるため、こんな変人にも身長が負けているのが悔しいと思ったこともある。今では関係ないが、変わらぬ恩師を見ていると胸が静まる思いにひたる。

 年中無休で研究に没頭している、いわゆるマッドサイエンティストとはこういう人間を指すのだろう。

 

-恋愛 / ラブ・ストーリー
-, , , ,

シリーズリンク

レビュー

この作品はいかがでしたか?
あなたの感想を送って、作家を応援しよう!

レビューを書く

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

おすすめ作品