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現代ドラマ

須磨子 第一話:苦い思い出

   2018年1月24日  

水田須磨子は高校の美術教師の夫、娘の静かに暮らしているが、夫からもらった入場券で美術展に出掛けた際、大学時代の恋人、金井と偶然再会した。

金井は懐かしげに声を掛けてきたのだが、不倫関係で苦い思いがある須磨子は動悸が激しくなっていた。

振り切って帰ろうとする須磨子に、笑顔の金井は「今度はじっくりお話がしたいなあ。携帯を教えてよ。」と話し掛けてくる。

断り切れなかった須磨子に若き日の思い出が甦る。それは・・

 

 
再会
 

1月末、水田須磨子は上野駅公園口に降り立った。

「うう、寒い・・」

小寒を過ぎ、ますます寒さが厳しくなるこの季節、木々の葉はすっかり落ちている。信号が変わり、横断歩道を渡って、東京文化会館の前を右斜めに進むと、右手に国立西洋美術館が見えてきた。

「これ、行ってきたら?」

昨晩、夫がチケットをくれた。

「どうしたの?」
「古い付き合いの先輩から買わされたんだよ。『俺とお前の付き合いじゃないか』って。」
「高かった?」
「ほんと、頭にくるよな。『割り引くから買ってくれ』なら分かるけど、『売れ残っちゃったから、定価で頼む!』だからね。」
「お付き合いよね?」
「そう、しょうがねえ先輩だよ、ははは。」

夫は高校の美術教師だが、「絵はじっくり時間を掛けて見たい。」と、いつも一人で出掛け、須磨子を連れて行くことはなかった。

「あなたは?」
「最終日に行くよ。行けば、先輩と飲み会だ。しょうがないよ、腐れ縁だから。」

夫は笑ってビールを美味しそうに飲んでいた。
 

 

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