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現代ドラマ

須磨子 第一話:苦い思い出

   2018年1月24日  

 
館内に入ると、外の世界とは別世界。とても暖かく、須磨子は直ぐにコートを脱いで左手に抱えた。

幸い平日の昼間ということもあり、美術館は空いていた。

だが、名画と言われる絵の前には、夫と同じ「じっくり見たい」というのだろう、長い時間立っている人が必ずいた。

須磨子は大きな風景画が好きだった。それが芸術的にどう評価されていようと、とにかく大きな風景画を見ると、心が開放されるようで、とても好きだった。

そんな絵を探して館内を見て歩いていると、背中の方から「須磨子じゃないか?」と呼び掛ける声が聞こえてきた。

まさかと思って振り返ると、「須磨子だよね?」と懐かしそうに呼び掛ける男が立っていた。白髪が目立つようになったものの、以前と同じように襟足にかかりそうな髪をきれいに七三に分けている。間違い無い。

「金井さん?」
「いやあ、覚えてくれていたのか、感激だな。」

やはり、大学時代に付き合っていた助教授の金井宗一だ。

馴れ馴れしく手を握って背中をポンポンと叩いてくる。この図々しさも昔と全く変らない。

「お久し振りです。」
「14年かな?」
「ええ、そうなりますね。」

出会ったのが、須磨子が大学3年、21歳の時、別れたのが大学院2年、24歳だったから、確かに14年になる。
 

 

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