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伝奇ロマン

怪盗プラチナ仮面 30

   

 フランソワ・コロージェは何の手掛かりも与えずに世を去ったが、吾輩はその後もマレーネの行方を探し続けた。

 そして何一つ成果を得られなかった。

 

 

パリ

 

 ──どうした。元気がないじゃないか。

 死の床にあるパリ警視庁特任捜査官が笑っている。

 96年暮れから丸3カ月、吾輩はパリはもとよりフランス国内をくまなく探し回った。マレーネの痕跡さえ見いだせず途方に暮れ、パリ郊外の病院で死の床にあるフランソワ・コロージェのもとにたどり着いた時には97年4月になっていた。

 ──君は思い違いをしているのだ。不幸な夢は早く忘れたまえ。
 ──しかしお前はこうして、俺と話をしている。これは否定しようのない事実だろう?
 ──私は君を深淵の底から救い出したいだけだ。なのに君は……

 そこまで言って激しく咳き込み、頭がベッドから跳ね上がる。コロージェは苦しげに息を継いで、再び吾輩の幻像に語りかけた。

 ──……つまらぬ意地を張り続けるのだから。しかし、もうじき私は君の前からいなくなる。後は誰が君の面倒を見てくれるんだろうね。

 死を間近にしながらも、警視の心は分厚い南極の氷山のように閉ざされていた。吾輩は彼と共にいる時間の無駄を悟った。

 ──さらばだ警視。もうじき娘に会えるな。
 ──さようならエドゥアルト。相変わらず君は、自分で作り出した幻の中を彷徨っているが、早くそこから抜け出すことだ。そして、真摯に自分を見つめて、中途で放り出した人生を始めなくてはいけない。それが何より、主の御心にかなうというもので……
 ──最後に一つ聞こう。「征服者の末裔」とは何だ。
 ──……知りたいかね。仮面に守られていたはずのインカがなぜ、わずかな手勢を引き連れたフランシスコ・ピサロの前にあっけなく滅んだのか? それで答えは十分だろう。君も遠からず滅びる運命なのだ。プラチナ仮面よ。

 吾輩は病室から去った。2日後、コロージェは誰にも看取られることなく息を引き取った。
 

 

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