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恋愛 / ラブ・ストーリー

君がいない世界なら、僕は生きていけない・8

   

 スクランブル交差点でターゲットを探すことにした。珈琲店に入って人のすれ違いを目を凝らして見ていた。

 だがさすがに太陽の照りつく光に眼球が疲弊する。

 目を閉じると、ふと耳に飛び込んできた有力な情報に俺は傾聴した…

 するとすぐに白咲を見つけた。
 
 

 尾行していくと、どうやらあるビルへと吸い込まれていった。

 十階で停まったエレベーター。看板を見ると、肝を冷やすネーミングが記されていた。

 煉獄会。携帯電話で検索していみたが、とんでもないバックがいることがわかった。

 そして白咲がどういう場所に所属しているのかも連想できた。

 クリスマスイヴの悲劇は、まさか…

 

 スクランブル交差点前で俺は周囲を見渡してみた。じわじわと汗が噴きだしている。五秒後には首まわり、ひたいに頬と汗が滴っている。ターゲットを見つけるまえに干物が一体できてしまう。

「あーついぃー、とりあえずコーヒーを飲もう…店の中からでもじゅうぶんに探れるってもんだ。さっきの男の子とギラつく空の下でキャッチボールはナンセンスですよって」

 ちょうど母親が、家の玄関から日射病になるよ、帰ってきなっ、と声を張っていた。

 俺は軽く愛想笑いと会釈をして、男の子に軽く手をあげて、またなっと返した。

 駅前の賑わう珈琲店で見張ることにした。軽食もあるから長居にはちょうどいい。中ぐらいのサイズのアイスコーヒーを注文した。監視のお供には無難というものがいちばんしっくりくる。

 16時が過ぎた。でもまだ外の熱は冷める気配はない。空も真っ青だ。日照時間はそろそろ傾きかけている頃合いだ。それなのにこの青空広がる世界はなんとも季節はずれなこと。

 となると白咲の活動もそれなりに活発だということだ。もう何時間も窓の外の世界を眺めているのか、それらしい人物は現れない。

「あの顔は忘れないんだが…インパクトはある」

 ふと深い息を吐いた。少し監視の目を緩めることにする。疲弊した眼球では見えるものも見ずらい。夏の日照りは強烈で眼球に少しも優しくない。

 目蓋を閉じた。また息を吐いた。1分だけ視力の休息をとる。するとこれまで閉じていた聴覚に意識がまわった。

 店内の音楽や店員の声、お客の会話などが耳にはいってくる。その中でも気になる会話が飛び込んできた。

「ねぇ、さっきの男…キモチ悪かったわね」女子大生風の露出度のある恰好の若い女だった。

 ガラス越しでその二人の容姿を目視した。

「ほんとうね、見た目パッとしないくせに軽口叩いて、ナンパなんて冗談じゃないわよ」見分けがつかないほど似通ったファッションの二人組の若い女子だ。

 ミニスカートにキャミソール。サンダルに茶髪のロン毛。派手なネイルに化粧もバッチリ塗りこんでいる。所持しているショルダーバッグはホワイトとブラウンの違いだけが判別できる二人だ。ペアルックというのはアイテムや服装が同じだというのに人物そのものまで似ているというのはどういうわけか、双子ではない。よく見ると顔が違う。メイクもおなじだから量産型に見える二人だった。

「でもどこか悪そうな人相だったわね」

「そうね、裏路地で狙っているって感じ…あれってぜったいよくない人種よ」

「ついていったらなにされるかわからないって感じ…最近よく噂きくしね」

 俺はその話題に耳を傾けていた。「そうか、あの手の輩なら日中表通りに姿をみせるわけがない。目立ちすぎる。裏通りで警察や街の至るところにある防犯カメラで警戒してそうだもんな。そういういかがわしいことをする輩ってことか…」

 一分が経過した。俺はそのまますぐに席を立った。女性たちに声をかけてその人相の悪そうな人物の居所を聴きだそうとしたが二人そろって唐突に携帯電話で通話をはじめた。

 まったく衝動的な行動まで同じタイミングか、心で突っ込みながら店をでた。

 猛暑の中を人海戦術で歩く破目になるとは考えてもみなかった。汗だくに干からびて干物一丁とそのまま居酒屋に並べられてしまいそうだ。でも、その甲斐はあった。

「マジかよ、こうも早くみつかるとはな」

 白咲がいた。ピストルを持っているかもしれない。目は合わせられない。

 やつの根城を探るため尾行止まりにする。これでひとつ明らかになった。

「白咲はまちがなくこのエリアを拠点にしている」

 珈琲店で女子大生風二人の会話の中で、センター街の東急ハンズの裏路地にキモチが悪く人相も悪い男にナンパされたといっていたのを当てに歩を進めてきたが、「一発必中とはね」

 口にした言葉に自己嫌悪を覚えた。

「そうだ、この男は沙良を流れ弾だったが一発で仕留めている。この場で殺してやりたい」

 奥歯を強く噛んで衝動を抑え込んだ。今こいつをここで殺したら捕まるのは俺だ。そうならないためにも回避できる妙案がないか探る。

 白咲は黒のTシャツにジーパンに雪駄という軽装…、たしか女子大生風の二人の会話では服装がまったくちがった。タンクトップに膝丈のパンツにスニーカーといっていたような気がする。髪形も短髪ではなかったと思う。ハズレだが俺にとっては大当たりだった。

 自動販売機で炭酸のジュースを買ってその場で飲んでいる。一見するとその軽装からしてピストルを隠し持つことはできないのはわかる。

 見る限り、どうやらこの時期はまだすさんだ状況ではないというわけだ。白咲にも事情というのがあるのだろう。

「くそっ、いいな…」さっきまで涼しい場所でアイスコーヒーを飲んでいたが、その余韻はすでに残暑の日照りが夕方だというのに強烈に俺の体を焦がしていた。

 買ったばかりの炭酸ジュースを飲みながら白咲も暑さにまいってダルそうに歩きはじめた。

 とぼとぼと、よれよれとした歩き方だったが、どうやら駅とは反対側にむかっている。

「どこへ…自宅にもどるのか」

 建物に照りつける陽射しがうむ影の中に身を潜め、隠れるように尾行を開始した。

 

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