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伝奇時代

生克五霊獣-改-23

   

 翌朝、晴明が蜃を迎えに来た。あれから蜃は眠れず、答えも出ないまま朝が来た。
「朝餉の時間だ。適当に話を合わせて、大人しくしておれば牢には入れられんから」
 蜃は、コクリと頷きながら牢を出た。大きすぎる晴明の着物を着たままであったが、一旦通された部屋に着替えが用意されていて、それに着替えてから来るように言われた。今度は、ぴったりだった。
「おはよう。蜃よ。少しは、反省したかのう」
 反省? 何のことだ? と思ったが、ここは晴明に言われた通り適当に合わせた。
「おはようございます、お祖母様。よく見れば、己と良く似た顔。父上と信じるには申し分ありませんでしたよ。昨晩は急な事で、酷く取り乱しました」
「左様であろう。その着物は、そなたのために唐から取り寄せたものじゃ。良質であろう。良く似合うぞ。そなたが最初に目覚めた部屋を、今後そなたが使うといい。欲しいものは全て与えてやる。なんでも申せ」
 富子は興奮気味に笑って見せた。
「では、お蝶を俺の世話係にしてもらえませんか? やはり、元から知った顔があるのは安心ですから」
 富子は不愉快な顔をしたが、それも最もだと渋々了承した。
「藤緒の娘じゃ。女狐の血、化かされぬように気をつけるのじゃよ」
「はい」
 蜃にとって、食事は葡萄酒に肉と奇天烈なものばかりだった。お蝶の姿は見えない。ちゃんと食事は与えられているのだろうか。
 その様子を察したのか、晴明が口を開いた。
「知った顔が既に見えないが、不安なのでしょう。母上、お蝶もこちらへ呼んでください」
 富子は、顔を顰めた。
「藤緒の血を引くもの、葛葉の血を引くもの。共に食事など、おぞましい」
「ですが、可愛い蜃の為ではありませんか」
「晴明がそうまで言うのなら……」
 仕方ないと、富子は泰親にお蝶を呼ぶように命じた。
 直ぐに、お蝶が現れた。
「お蝶、今日から蜃の世話係じゃ。昼の世話はもちろん、夜の世話も全て抜かりなく。式神の世話はもうよい。わかったな」
「かしこまりました」
 お蝶は、蜃に葡萄酒を注いだ。
「お蝶に飽きたら、いつでも寝女を替えてやる。言うが良い」
 お蝶の目元に、悔し涙が浮かんだ。
 食事を終えると、お蝶と部屋に入った。昨日から、敷かれた布団はそのままになっていた。
 それを見たお蝶は、涙を流しながら自分の帯を解いた。
 
 

≪つづく≫

 

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