幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

恋愛 / ラブ・ストーリー

君がいない世界なら、僕は生きていけない・14

   

 羽場戸先生が現れたのはもっと大きな問題があるからだった。それには俺に会わないとならない意味があったからだ。

 しかし、発端はやはり白咲だった。

 2034年12月15日──。

 イヴの10日前だ。

 その頃から煉獄会とアンチズの抗争の種火のような火蓋が切って落とされていた。

 神妙な面持ちでその抗争が、未来に大きな悲劇をもたらすことを話しはじめた。

 俺は半ば相手にしてなかった。だが、恩師の真顔ときたら、これまで見たことないほど真剣なものだった。

 そして、きっかけはあのとき…と続けた。

 

 大きな問題がすでに…いや、最初にいた俺の時代ですでに事態は起きていた。明るみになっていないがスクランブル交差点の悲劇はただの幕開けに過ぎなかった。

 最初は小さな種火だった。あちこちで勃発しついには大炎上となった。細胞分裂からの癌細胞。まさに死の連鎖だ。

 クリスマスイヴの数日前に起きていた。

 煉獄会とアンチズの抗争勃発が火蓋を切った。

 2034年12月15日──。

 俺はまだその日時の両組織の事情をまったく把握していない。

 沙良が射殺される10日前ということだ。

「きみはまだしらないのだな」羽場戸先生は嗜めるように言った。

「どういうことですか?」

「あの二つの組織は奪って奪われての繰り返しについに煉獄会の怒りを増長させ、ガキども全滅を企てた。とはいっても警告のようなものだ。この街をよくしている大人たちが、若い連中が汚してどうするとね」

「でも、そんなことを聞くもんですか?」

「そうだ、どんどんそれはエスカレートしていく。注意すればするほどにね」

「ソーシャルネットワークで写真やいたずらや破廉恥な動画を投稿しているのもあったりするが、それが度を超えているせいで、ついに煉獄会は街を練り歩くようになった」

「その12月15日だと、もう俺が過去で力を尽くしていた時期とはだいぶ未来になる。俺がもどったのが10月21日から11月中ごろまでを行き来していたと思います」

 恩師は頷いた。

「だから、妹さんは亡くなった、いや犠牲者として成り変ったのかもしれない」

「そんなことまで、そんな関連性までしっているんですか?」

 俺は目を細くさせ恩師の言葉が飲み込めなかった。

「だから過去にもどれるだろ、我々は」先生はそういうと球体を陽射しに照らしながら見せびらかす。

「じゃぁ、俺のしらないところで事細かく両組織を監視してたんですか?」

 羽場戸はいたずらっぽく微笑んだ。

 俺はやられたと思った。すでに事情を俺よりも詳しく把握している。だが、なぜ?

 俺は疑問を抑えきれない。

「先生は遠目で監視していた。なぜか、自ら関わろうとしている気がしますが」

 羽場戸の胸の内は読めなかった。先生は黙っていた。それに実家に押しかけるほどの熱量はいったい…。それにいくら抗争だのいっても大問題というほどのものだろうか、と俺は内心、先生の話を半信半疑でしか相手にしていなかった。

 二人の間にただならぬ気配が淀みはじめた。教え子の顔を見据えている中年男性の顔は、きつく睨みつけているようだった。

「このままだと未来がないからだよ」

 奇妙なことを言いだした。未来がどうなるのか、何があるというのか。あまりにも唐突な言い方だったから驚いた。

「あなたは未来を見てきたというんですか?」おもわず、恩師にあなた呼ばわりしてしまった。

「そうだ」案の定だ。未来を行き来していたと話していたが、まさかそんな差し迫った時期で不幸が降りかかろうとしていた。

 だから先生はそうならないために、過去となる原因を突き止め食い止めようと孤独に闘っていたのだ。

「俺は、自分のために勝手にやっていたのに…」

 先生はゆっくりと語りはじめた。だが俺は聞かなければよかった。

 個人的干渉で周囲がどうなろうと関係なく、気にせずしあわせになろうとしている。そのために俺はこの世界の秩序を破った。時間を自由に過去未来を行き来する手段を得て、沙良をとりもどした。

 羽場戸は厳かに言った。「渋谷が崩壊する…、二つの組織によって抗争がはじまる。きっかけはあのときだ」

 煉獄会の若い構成員が荷物を二十歳前後の集団によって強奪された。

 俺がこれを奪い返し煉獄会に送り返した。これで事なきを得たはずだった。

 羽場戸はその先を見ていた。「新たな抗争の原因が勃発した。それも何度も繰り返し…怒り狂った煉獄会は重い腰をあげた。その若僧たちは善意というものをあざ笑い、奪ってはごみクズのように川に放り投げていた。ついに行き過ぎたイタズラによって煉獄会は立ち上がった。まずは警告だったが、なかなか見つからない。しかし、噂がアンチズの耳に入ると煉獄会の仕業にみせかけて立場を危うくさせた。すぐに事実無根であるが、それが次なる火蓋を切った」

 どうしてもそんなことが起きていたとは思えないが、黙って先生の話を聞いていた。

「そして最終的に、渋谷が火の海になる」

 俺はそんな渋谷を見たくはない。

 

-恋愛 / ラブ・ストーリー
-, , , , ,

シリーズリンク

レビュー

この作品はいかがでしたか?
あなたの感想を送って、作家を応援しよう!

レビューを書く

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

おすすめ作品