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恋愛 / ラブ・ストーリー

君がいない世界なら、僕は生きていけない・15

   

 2034年12月15日──。

 俺は渋谷の駅前で羽場戸先生と合流することになっていたが、人の多さに見つけられない。

 その代わり、アンチズのメンバーの男女を先に発見した。

 羽場戸先生が俺を見つけて、最悪だ、と言った。

 なんのことかわからないが、白咲を尾行しアンチズに扮して俺は一人行く手を阻んだ。

 そして妙に怒りを放っていた白咲だったが、背後から羽場戸先生がスタンガンで気絶させた。

 ショルダーバッグを奪い、作戦は成功したが、羽場戸先生の顔は優れていない。

「最悪」

 その言葉の意味を語り始めた。

 

 2034年12月15日──。羽場戸先生は俺が未来に飛ぶ前に、この日に渋谷駅前付近にいるから合流すること、と言っていた。

 未来から過去へもどるさい、球体にはこの日になるようイメージした。

「先生はどこだろうな…」

 連絡を取る手段がない。時間を移動している旅行者ははぐれたらそれっきりだ。再会は難であるが目的が一か所に集中しているため磁石のように引き合わせる運命がある。

 タイムトラベラーの特性ともいえる。

「まぁ、いい…これは一人でできる作戦だ。むしろ先生は過去の自分が苦労しないように妙案を練ってくれたように思う。もっとも俺が一人でやれるようにするんだから、他力本願なところはあるな──」

 駅前を探索するもそれらしい輩は見当たらない。ただ胸は切なくなるばかりだ。スクランブル交差点は俺の胸と記憶を蝕む。

「少し気を張りすぎてか、疲れたな…」

 こういうときだからか、沙良のことが気になってしかたがない。ひさしぶりに顔を見たい。言葉を交わしたい。髪の毛を撫でてあげたい。デートがしたい。幸福な時間を勝ち得たいために我慢しているが、そろそろ充電期間が必要だった。ちょうどそんな衝動に駆られているときだ。

「アンチズのメンバーの、あれはたしか」内心ドキッとした。こうも早く見つけられて眼が真剣になった。

 見覚えがある五人組の一人だった。腕に絡みついているのは彼女のようだ。その彼女も見覚えがある。ついさっきだ。未来で煉獄会に反発していた迷彩服を着込んで新聞の記事に載っていた一人だ。

「気に入らね、俺は孤独で未来を幸福になれるように奮起している最中だというのに、この若僧が!」

 歯ぎしりしながら怒気は増幅されていった。

 廃屋になった酒屋の息子、タクジだ。彼女を連れてデートを楽しんでいる。

 渋谷を根城にして悪巧みをする集団の一人。ある意味リーダー格の男だ。

 彼女のリナ(十九歳)はいまどきのギャルそのものの見た目だ。金髪に露出度のある服装。真冬でもファッションのためなら関係ないようだ。

 この二人を尾行する。何度目か、他人を尾行している日常。まったくもってこそこそとしている暮らしにうんざりだ。

 未来で羽場戸先生から練りに練った作戦で行動をしている。ほんらいなら白咲がアンチズと遭遇した路地裏で白咲と対峙することが一番手っ取り早いが、どういうわけか羽場戸はこの日を指定した。

 過去にいる恩師と共闘するためだがタイミングがよくこの日ではないとならない理由があった。

 それを教示してもらい久々に羽場戸先生が教鞭をとって、学生時代にもどった気分だった。かならずこの作戦を成功させて先生と祝杯をあげたいとめずらしく俺は思った。

 沙良が被害に遭うことを避けるためだった。そんな些細なタイミングによって様々な軸がブレてしまうらしい。

「朔護くん」

 背後から声をかけられ、鼓動を殴られたように胸をおさえながら飛び退いた。

「先生…びっくりした、えっ、未来からきた羽場戸先生ですか?」すでに先生の球体を直視してわかっていたが訊ねていた。

「そうだ、来たようだね」

 羽場戸先生と再会できた。

 やはり助言どおりこの日、駅前で遭遇できる可能性が十分にある。それは正しいアドバイスだった。

 未来の渋谷エリア壊滅をその目で見てきたことを話す。

「はい、しっかりとこの目で見てきました。未来のこの場所は荒廃した世界でした。そこには悲しみしか言いあらわせない光景が広がっていた」

 先生は同感と言わんばかりに深々と頷いた。

「それで先生、俺は未来の先生と会いました」

「そうか…なら、わたしの記憶が上書きされ助言などをされたか?」

「先生の記憶はまだ上書きされていなかったです。助言というより過去を変えるための手段。その作戦を練ってくれました」

「上書きされていない? 同じ時間軸の世界に同じ人物はいない、記憶は過去から未来へ駆け上がるように上書きされる。それがなぜならなかったのか…ただ誤差が生じたものか」

 

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