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伝奇時代

生克五霊獣-改-25

   

 葛葉、晴明の気持ち、蜃の決めた選択とは異なる道を求める松兵衛。
 松兵衛は里に到着すると、三人にお家を取り戻す事を迫るのだった。

 時代伝奇ストーリー!

 

 気付かれないよう、部屋に戻ったつもりだった。
「何処に行っていた?」
 蜃が部屋に戻った所を、晴明が声をかけた。
「厠ですよ」
「随分遠いな」
 ふうっと、蜃は息を吐いた。
「安心しろ、富子にも泰親にも見つかってはおらんよ」
 蜃は、晴明を部屋に入れた。そこには、蜃の帰りを待つお蝶がいた。蜃の着物を着て、蜃同様に髪をあげている。
「影武者か、面白いことを考えるな。それで、何処に行っておったのだ」
「お蝶さん、もういいよ。ありがとう、部屋で休んでおくれ」
 お蝶は2人に一礼すると、部屋を出た。
「葛葉さんに、会ってきました」
「何をしに?」
「話がしたかったんですよ、色々と。いけませんか?」
「……いけなくはないが……何を話したのだ」
「里のこと、俺のこと、今のこと。あの人は、このままでいいと思ってる。だから、俺はこんな所さっさと帰って、元の生活に戻るよ。そして、ここの事もあんた達のことも全部忘れる」
「恨んでるか?」
「恨んでるわけじゃないけど……色々と辛いよ、ここは」
「そうか」
 晴明の顔が、優しく笑った。蜃の頭を撫でる温かい手の感覚が、互いに心地よく感じた。
「明日には、松兵衛も到着するであろう。達者でな」
 蜃は、こくりと頷いた。
 その晩、布団の中で手首に着けた数珠を見ていた。松兵衛が大切にしろと言っていたこれは、晴明と葛葉がせめてものお守りにと蜃に持たせたものだと聞いた。
 今夜は、眠れそうにないかもしれない。数珠を見ていれば見ているほど、色々な思いが巡ってくる。今まで育ってきた血の繋がらない家族、そして今尚苦しむ血の繋がる家族。
「俺は、どれだけの人に守られているのだろう」
 今まで、微塵も感じたことすらなかったのに。
 本当にこれでいいのだろうか。
 
 

*****

 

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