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恋愛 / ラブ・ストーリー

君がいない世界なら、僕は生きていけない・16

   

 羽場戸先生は作戦の話を続けた。

 作戦の2は煉獄会にアンチズからの挑戦状のようなものを送りつける。これが俺に課せられた使命だ。

 そして、今ごろ白咲にも異変が起きているかもしれない。

 手はずは整った。抜かりなく挑発文の手紙を直接ポストに届けいれた。

 羽場戸先生と合流して、明日には連絡がくると確信していた。

 煉獄会、アンチズにとって双方大事なものをある場所へと監禁。

 その場所へ誘い込み、互いがいがみ合うように仕向ける。

 これが作戦の一つだった。

 

 作戦2、煉獄会とアンチズが全面戦争になるよう細工する。アンチズからの挑戦状だと思わせる内容を煉獄会に偽装して送る。挑発された煉獄会は全身が沸騰した血液によって人間の野生じみた闘争心に火を灯す。

「うまくのってくれればいいが…」俺は危惧しながら挑戦状を送り付ける。

 実際、白咲から荷物は強引にも奪えた。

 これも未来を救済するためだ。俺は白咲がそれほど悪いやつではないと思っている。

 赤いとんがり帽子をかぶり悲劇を起こし、そこまで追い込んだ要因がまさかリナという女一人に欺かれていたとは、白咲の純粋な心に同情しかない。

 だが、そのせいで今の白咲はレベルアップしている。いくら俺と羽場戸先生による前後ではさみうちにし、背後から先生が気絶させたとしてもだ。

 彼の中では変貌を遂げるだろう。生きものの中に見え隠れする悪意の殻にヒビが生じて覗き見ている。

 今ごろ羽化して物事の判断がわかったとき、それはかならず牙を剥く。

 善の心が折れたとき殻は内面から打ち砕き外壁を乗り越えて化け物は召喚される。その化け物に内面を支配された白咲がクリスマスイヴの夜に姿を見せたのだろう。

「まったく、ふざけた挑戦状になっちまったな」

 文面の誤字脱字がないか再確認した。あとはこれを収める封筒がほしい。コンビニエンスストアを探してみた。

 パンダの模様の便箋と封筒のセットしか売ってなかった。それと封筒はかなり薄いピンク色で小粒のパンダが点在するようにおどけた姿で装飾されていた。ほかで探す時間はない。だが、これはこれで相手をむしろおちょくるためにも妙案というものだ。挑発になる。

 念のため煉獄会の中で警察、特に鑑識あたりと通じている者がいないかと脳裏をよぎった。もとより煉獄会を悪者にしてもしかたがない。

 ただ白咲が単独で暴走しないための伏線のようなものを考え出したのだ。

 公共の場で書いた方がいいだろう。コンビニエンスストアの裏路地で書いた。あとどこにでもあるボールペンを使った。特定の人物につながる要素はまったくない。

 ビニールの手袋もして指紋はついていない。慎重に扱えばぬかりはない。

 落ち度はない。ここまでの行動を思い起こす。客観視すれば証拠につながる何かが見えてくるものだ。

「よし」

 落ち度はない。確信を得たことであとはこれを投函する。煉獄会のポストに直接投函する。明日までには気づいて一読するはずだ。そしてかならずその連絡がくる。手紙の挑発文によって連絡はくるだろう。

「うまくいったようだね?」先生と駅前の喫茶店で合流した。

「はい、明日には連絡が来るでしょうね」

 俺は携帯電話を握っていた。普段はスマートフォンを使っている。これは羽場戸先生が用意した新たな端末だ。

「手紙にはメールアドレスが書いてあります。まずはメールで連絡をさせてもらい直前に電話番号を教えて直接話す」

 先生は問題ないと、頷いた。

「あとは双方にとって大事なものをある場所に監禁する。これで対峙は可能となる」

 先生がそういうと視線をちらっと喫茶店の窓の外へむけた。アパレルショップで服を畳む今どきのギャルを見つめていた。

「アンチズのタクジの彼女でリナといったか」

 先生は周囲には聞こえないよう俺につぶやいた。

「そうですね」俺も頷いてみせた。先日も、何度か繰り返すスクランブル交差点でのクリスマスイヴの悲劇を目撃した女子だ。

 

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