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ハードボイルド

前園珠里探偵物語 悪魔の子②

   

ノゾミを不審に思い、探っていた珠里だったが、決定打は見いだせない。
ノゾミの父親・アフマドを探しに向かった覗き小屋で占い師に「信用する人を間違えるな」と言われるが……
『悪魔の子』第二話 配信

 

 
 珠里が××警察に電話をかけ、駅で流れていたインターネット広告にクレームを言うと、一旦保留に置き換わり、ぼそぼそした女の声がした。笹倉の愛人のひとり平沢 聡美だった。
『はい、××警察広報課、平沢です。××警察のインターネット表記で男性についての問題があったとか。誠に申し訳ありません。状況を説明していただけますか?』
 電話口に出た平沢は事務的に話す。
 隠語だった。インターネットは、所轄内の内部検索をしろ。表記は、戸籍を調べろ。男性は、そのまま。つまり、男の戸籍を所轄内で調べろという珠里の指示だった。
「十歳、ノゾミ・サウード、もしくはノゾミ・ウエダ。アフマド・サウードの息子」
 珠里も端的に応じる。お待ちください、の声がしてキーボードを叩く音がする。署内では控えめにしているが、平沢のはじき出すキーボードと情報は異常な精度を誇っている。笹倉が手元に置く理由のひとつはそれで、もうひとつは身体の相性が良いからだった。平沢は地味で暗くて陰険で髪に脂やフケが浮いてるような女だが、笹倉が暴力団関係者と知っても自分の情報網に取り込むくらいタフで、寝技も凄かった。
『情報提供ありがとうございました。情報を修正します。今後とも、××警察をよろしくお願いします』
「どーも」
 さっそく携帯にノゾミの戸籍データが届いた。開封されたデータは有効期限付きで十分後に消去される手筈になっていた。
 ファミレスでの喧噪のなかコーラでオムライスを流し込みながら一読し、ノゾミ・サウードの情報を手に入れたが、戸籍は驚くほどなにもなかった。
 父親:アフマド・サウード
 母親:上田 真琴
 のち、離婚している。これだけ。データは勝手に削除された。
(つーことは、アフマドの居場所を調べないとな)
 手伝ったヤミ金の社長に連絡すると、『覗き小屋だな。あいつまた借金作ったからなあ』とあっさり返ってきた。
 覗き小屋は歓楽街の裏手にひっそりとある。
 ちゃんとした劇場名があるのだが、覗き趣味の人間しかいかないので誰もその名を呼ばなかった。
 珠里も何度か事件で通ったことがあったが、チビの支配人がやたらめったら珠里を勧誘するのであまり気乗りしない場所だった。 
 女も男もその趣味の連中が行く場所で、鍵穴の小さな穴からお気に入りの子を眺めたり、情事やSMを眺めたりする。女同士も男同士も要望と金を出せばやる。客とショーをやる人間がふれあうことはない。アフマドはモテるからそっち方面で使われているのかもしれない。開演前に入れば会えるだろうと踏んだ珠里は、コーラとポテトフライを追加注文した。
 

 

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シリーズリンク

前園珠里探偵物語 悪魔の子 第1話第2話第3話

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